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第4話

夜中、斎田は薫のために心を込めた料理をたくさん作った。

薫は感動して涙が出そうになった。

斎田と同居を始めたこの間、薫はずっと自ら手料理して、斎田に気を配っていた。

斎田がただ一度料理をしただけで、薫の感動を簡単にもらえた。

でも彼女は忘れていた。結婚してから、薫の食事はずっと俺が担当していたことを。

薫は酸っぱいものが好きだから、俺は車で数十キロ走って彼女の大好きな酸っぱいあんずを買いに行ったことがある。

慢性胃腸炎を患っている薫に、俺は毎日早起きして温かいお粥を作ってあげた。

薫が仕事に行くと、デスクのそばにはいつも俺が作った温かいお弁当がある。

五年間、一千八百二十五日。毎日毎食、俺は彼女のために心を込めて用意していた。

春から冬まで、俺は一日も休まずやり続けてきた。

そして現在。

薫は目尻の涙を拭った。

斎田は彼女にお粥をよそった。

食べた瞬間、薫の顔色がわずかに変わった。

「丹吾さん……このお粥に海鮮類が入っているの?」

斎田は得意げな笑みを浮かべた。彼は薫が自分の意図に気づいたと思ったのだ。

「この季節はちょうど海鮮が美味しい時期で、わざわざ外国から取り寄せたんだ。このロブスターだけで二万以上かかったよ!」

価格をわざと強調した斎田は、薫を見つめた。その目つきは褒めてもらいたいというものだった。

いつも彼を甘やかしていた薫は、黙って海鮮粥を置き、返事をしなかった。

斎田の目に一瞬失望の色が浮かんだ。

俺は冷笑した。

薫は海鮮アレルギーだった。

だから、いくら海鮮が好きでも、家では海鮮料理を一切作らなかった。

ある時、薫が誤って海鮮の入った料理を食べてしまい、全身に赤い発疹ができたことを覚えている。

真夜中に、俺は薫を車に乗せて、命がけで車を走らせ病院へ向かった。

夜露が冷たく、薄いシャツ一枚しか着ていない俺は、車にあった唯一のジャケットを薫にかけた。

その時は、俺が薫の温かい表情を見た数少ない瞬間だった。

彼女は俺の腕の中に横たわり、俺の首をしっかりと抱きしめ、温かい頬を俺の胸に寄せていた。

点滴を受けている時、薫が突然俺の手を握った。

一瞬、彼女が心変わりしたのかと思った。

家に帰る途中、俺はずっと考えていた。もしかしたら、俺たちは本当に普通の夫婦のように、愛し合いながら年を重ねることができるかもしれないと。

しかし翌日、薫は斎田から電話をもらった。

斎田は風邪をひいたと言った。

ほとんどためらうことなく、薫はすぐに服を着替えて外に出た。

出発する前に、彼女は申し訳なさそうに一目だけ俺を見た。

「勝俊、会社に急ぎの用事ができちゃった」

「約束していた映画は、次回にしましょうか」

俺は微笑んでうなずいたが、指先はすでに深く手のひらに食い込んでいた。

残念だったが、もう次はなかった。

なぜなら何日後に、俺は殺されたからだ。

七十二回、俺の体にナイフで刺された。

とても痛かった。

俺は星が閃く平野の下で、広まっていく血がまるで空まで染めていくかのように感じた。

斎田の誕生日を祝う薫の、甘い笑顔が脳裏に浮かべていた。

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