共有

第10話

警官は薫を面会室に連れてきた。

俺を殺したあの男が、今ガラスの向こうに座っている。

「あなたは西村の妻ですね、とても綺麗ですよ」

「俺は西村のスマホの待ち受けであなたの写真を見たことがあります」

薫は無表情で向かいの席に座り、何も言わなかった。

犯人は悪魔のような微笑を浮かべ、続けて言った。

「西村は本当に男らしかったですよ。俺が彼の指を一本ずつ折っても、彼は一言も言わなかったです。恐れを知らない獲物なんて、つまらなかったです」

「だから脅迫したんです、叫んで命乞いしてくれなかったら、お前の妻も誘拐して殺すと」

「どう思いますか?西村が泣きましたよ、ハハハハハハハ!」

「被害者の家族を刺激するな!」

警官は立ち上がって制止した。

薫は無表情で犯人を見つめ、ゆっくりと口を開いた。

「彼に話させてください」

薫の眼差しはとても静かで、静かすぎて少し怖い感じがするほどだ。

犯人は口元を歪めて笑い、「知ってるんですか?最後に俺が彼の心臓にナイフで突き刺した時、彼は薫という名前を叫んでいたんです」

「薫、あなたの名前ですかね?」

人は死ぬ前に、走馬灯が頭の中に流される。

生命の兆候が消えかけたその瞬間、たくさんの人々のことを思い出していた。

俺の姉、俺の友人、俺の人生に足跡を残したさまざまな人。

でも最後に、俺の心にはある光景が焼き付いていた。

その光景の中、薫は純白のウェディングドレスを着て、俺と結婚すると言ってくれた。

広大な原野を、列車が疾走し、俺の声をかき消した。

最後に「薫」と叫んだ声は、犯人だけが聞こえた。

……

面会室内に、薫は椅子に釘付けにされたように、微動だにしなかった。

俺はイライラしながら薫の周りを行ったり来たりしていた。

俺は彼女が無表情で立ち上がり、無表情でドアの外に向かって歩いていくのを見ていた。

外ではしとしとと小雨が降っていて、薫は傘をさしていなかった。

立て続けの打撃が、薫を麻痺させたのかもしれない。

彼女は無表情で雨の中を歩いていた。怒りもせず、泣きもせず、ただ静かに歩いているだけで、その瞳には生気がなかった。

突然、眩しい車のライトが薫に当たった。

トラックの運転手が車を止めて怒鳴った。「目がついてないのか、真昼間に赤信号を無視して、車に轢かれるのが怖くないのか!」

薫は道路
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status