2013年10月3日、晴れ今日、俺は薫と結婚した。この日を、俺はとても長い間待っていた。薫は知らないかもしれないが、僕が彼女を好きになったのは、彼女が「愛」という言葉を知る前のことだった。結婚式で、俺は彼女に、小学校で彼女の後ろの席に座っていたあのちょっとおかしな男の子を覚えているかどうか尋ねた。薫は首を横に振り、覚えていないと言った。しかし、俺は少しも失望していない。大丈夫、俺が彼女を愛していればそれでいい。俺はこの一生をかけて、彼女を愛し、敬い、大切にすると決めた。2014年7月6日、晴れ同時に5つのアルバイトをするのは、とても疲れた。タクシーは高すぎるので、歩いて帰ることにした。帰り道に薫が大好きなドリアンを買った。夕食の時、彼女はなぜ俺がドリアンを食べないのかと尋ねた。俺は笑って、自分が好きではないと答えた。実は食べたくないものなんてないんだよ。ただ最高のものを、最愛の人に残したいだけ。とても幸せだ。2015年3月1日、小雨のち曇り薫の会社がついに上場した。起業初期には、貯めた全ての金を使い果たしたが、それでも全てが価値あるものだった。薫が苦労の末に幸せを手に入れたのを見て、俺は本当に彼女のことを嬉しく思った。これから俺たちの生活は、もっと良くなるでしょう。2016年11月6日、大雨薫は最近ずっと携帯をいじって誰かとチャットしていて、恋をしているような笑顔を見せている。さらには、彼女は俺と別々の部屋で寝たいと言い出した。実はこの間、薫が俺に対して疎遠になっているのをうっすらと感じていた。俺たちの間には何かが横たわっているようだ。自分に言い聞かせようと努力してる、もしかしたら考えすぎかもしれない。薫を信じよう。薫を信じるんだ。2017年2月8日、曇り薫の初恋の相手、斎田が今日帰国した。ついにわかった、俺と薫の間にある壁が何なのか。俺が空港に駆けつけ、薫と斎田が抱き合っているのを目撃したとき、心が痛んだ。俺は何なの?俺と薫の過去は何だったのか。もしかしたら、それらはすべて俺の一方的な過去だったのかもしれないと思った。2017年2月9日、晴れ薫は今夜帰ってこなかった。薫を信じて、薫を信じるんだ。勝俊、彼女を
俺の魂は薫にぴったりとついていく。彼女は斎田の住居に着いた。ドアを開けると、来たのは薫だとわかって。斎田の目に一瞬の喜びが浮かんだ。薫は無表情で部屋に入った。斎田は薫に一杯の水を注ぎ、笑って言った。「薫、ついに心を入れ替えてくれたんだね」「人は死んだら生き返らない、ぼくたち生者は苦しみに浸る必要はない」「僕と結婚して、薫。僕は君を守るよ」薫はその水を受け取らなかった。ただ呆然と斎田を見つめていた。「丹吾さん、あなたが海外で負ったその賭けの借金は返済しましたか?」斎田は相手がこの質問をするとは思ってもみなかったから、その場で固まってしまった。薫の目に憎しみが閃いた。「私は本当に馬鹿だった、あなたに何年も騙されていた」「あなたが海外でやった悪事は、調べればすぐにわかるのに、私はあなたを信じて一度も調べたことがなかった」「勝俊が私に忠告したのに、私はそれでもあなたを信じることを選んだ」「斎田、勝俊はあなたが殺した」「あなたは殺人犯だ、なぜ彼の代わりに死なないのか!」薫の感情が徐々に制御不能になっている。彼女は怒りに満ちて立ち上がり、バッグから短刀を取り出し、狂ったように斎田に向かって突進した。斎田は薫が人を殺すとは全く思っていなかった。彼は避けることができず、刃先が腹部に刺さった。鮮やかな血の花が咲いた。斎田は地面に倒れ込み、苦しみながら助けを求めた。「痛い……」斎田が痛みを訴えるのを聞いて、薫の目が赤くなった。「あなたが痛いなら、勝俊はもっと痛い」「七十二回、彼はどうやって耐えたんだ!」斎田はすでに制御不能になった薫を見て、恐怖に駆られてドアの外へ這っていった。薫は何も言わず、ナイフを斎田の左脚に深く突き刺した。一回、またもう一回。薫の顔に血のしずくが飛び散った。「丹吾さん、あなたが何万回死んでも勝俊に対する罪の償いにはならない、あなたは殺人犯だ」もしかして今日逃げられないことを知っていたのかもしれない。絶体絶命の状況で、斎田の目つきは次第に凶悪になっていった。「薫、お前に僕を批判する資格があるの?」「お前も殺人犯だ」薫はその言葉を聞いて呆然とした。斎田は流血する腹部を押さえ、恐ろしい目つきをした。「薫、勝俊の身分証を俺に渡
警察が薫を逮捕したとき、彼女は家で私の遺影を拭いていた。彼女は逃げなかった、逃げようとも思わなかった。彼女の手首には銀色の手錠がかかっていた。薫は安堵の表情を浮かべた。「警官さん、着替えの衣類を何着か持って行ってもいいですか?」警察は少し躊躇したが、同意した。俺は薫が寝室に入るのを見ていた。俺はすぐに追いかけたいと思ったが、ドアを通り抜けることができなかった。内心に不吉な予感が湧き上がった。果たして、数秒後に下から大きな音が聞こえた。すぐに、誰かが叫んだ。「飛び降りた……誰かが飛び降りた!」
警察が到着したとき、薫はすでに血まみれで倒れていた。彼女の目は大きく見開かれ、家の方向をじっと見つめていた。手に写真を握っていた。警察は大変な努力をして、やっと写真を引き出した。それは俺たち結婚写真だった。薫と勝俊のウェディング写真。……数日後、薫の事跡が報道された。誰もが言うには、薫は結婚中に不倫し、夫を死なせ、愛人を手にかけ、罪を恐れて自殺した。完全な……狂人だ。
俺の魂は薫のそばに囚われていたが、彼女は今死んでしまったため、俺の魂も消えるだろう。最後に空の夕焼けを一目見た。強烈で、輝かしい。出発前に、姉にも一目会いに行った。彼女は私の位牌を丁寧に拭き、両親の位牌の隣に置いてもらった。彼女に話しかけに行きたい、痩せた彼女を抱きしめたい。けれども。俺の魂は徐々に半透明になり、さらに薄まっていく。目の前にいる親族を見つめるだけで、抱きしめることができない。魂が消えるまで見続けた。……薫の魂は冥界をさまよっていた。通りかかる霊に会うと、彼女は相手の襟を掴んで、俺の行方を尋ねた。みんなが言うには、三途の川のそばに狂った女の霊がいると。ある日まで。彼女は俺にとても似ている後ろ姿を見た。薫は狂ったように追いかけていった。その姿はとてもぼんやりしていて、追えば追うほど遠ざかっていく。追えば追うほど、遠ざかる。「勝俊、あなたは本当に私を許してくれないのか?」薫が大きな声で叫んだ。「チッ」と俺は答えた。許さない、生まれ変わっても許さない。薫はその背中が徐々に遠ざかるのを見て、目に絶望の色が浮かんだ。彼女はためらうことなく振り返り、三途の川を渡らずに地獄の池に飛び込んだ。熱い溶岩が瞬時に彼女の霊を飲み込んだ。薫は転生できなくなった。それはつまり、来世ではもう彼女に会えないということだ。よかった。前世は薫のために尽くしすぎた。本当に自分を愛している人は誰なのか忘れたぐらいに。来世。俺はまだ知子の弟になりたい、志を同じくする友達と知り合って、本当の世界旅行をしたいと望んだ。これでいい、これでいいんだ。完
俺が死んでから三ヶ月経つが、妻の西村薫は全く気づいてくれなかった。彼女は俺がいない間に、初恋の斎田丹吾と一緒に、俺たちの新居に暮らしていた。斎田は寝間着を用意していなかったため、薫は俺の寝間着を彼に貸した。しかも斎田は眠りが浅いからって、薫は俺たちの新婚用ベッドで斎田の背中を優しく撫でながら寝かしつけた。まるで彼ら二人こそが本当の夫婦のようだ。しばらく続いて、ある日の出来事。斎田の胃病がまた発症した。薫は焦って家中の隅々までしばらく探していたが、薬箱は見つからなかった。彼女はようやく俺のことを思い出し、電話をかけた。「勝俊、家にある薬箱はどこに置いてあったの?」「ところで、いつまで私と揉めるつもり?私はただ友達の誕生日を祝いに出かけただけだったのに、あなたは3ヶ月も家に帰らないでどういうことなの?」「そんなに嫌なら私と離婚すればいいのに、冷たい態度で人を無視するなんて男らしくないわ」しかし、電話の向こうから返してきたのは俺の姉の声だった。「離婚するなら、勝俊は区役所に行けないと思うけど」「彼はもう死んでいるから」俺の死に様は惨烈だと言っても過言ではない。あの日、薫は斎田のために誕生日を祝っていた。俺は車のトランクに閉じ込められた。やっとの思いで縄をほどき、画面が割れたスマホを手に取り、薫に電話をかけた。電話を出てくれたのがいいものの、薫ではなく、見知らぬ男の声が聞こえてきた。「薫、僕の誕生日を祝ってくれて、西村さんに怒られない?」「彼のことを出さないで、今日は丹吾の誕生日に集中したいの」薫の声を聞いた瞬間、不意に絶望感に襲われた。誘拐される前に、俺と薫は結婚してからの32回目の喧嘩をした。喧嘩の理由はとてもシンプルだった。薫は俺が彼女を信頼していないと不満になり、結婚しても友達の誕生日を祝う権利があると考えていた。しかし彼女が言う友達とは、彼女の初恋の相手である斎田のことだった。薫に俺が疑い深く、理不尽に騒ぎ立てると言われた。俺と一緒にいる生活するのは退屈で味気ないとも言った。最後に、彼女は俺の制止を振り切って、斎田のところに行った。薫が去った後、俺は出かける時に誰かに叩かれて気絶させられ、車のドランクに運ばれた。トランクのドアが開かれた。俺の頬に
人々は、死後の魂は生前に最も恋しい人のそばに留まると言うらしい。俺の魂は薫のそばで漂っていた。この三ヶ月間、斎田が俺の寝間着を着て、俺の物を勝手に使い、薫と同じベッドで寝るのを見ていた。全然家事していなかった薫は、毎日早起きして斎田に愛情たっぷりの朝食を作っていた。さらに斎田の下着を手で洗っていた。三ヶ月、九十日以上の日夜。俺の妻は初恋の相手とべったりとくっついていた。最後の一歩までは、ほとんどやれることは全部やった。俺の魂は彼らの周りを漂い続け、気持ち悪すぎて一分一秒でもいいからこの二人から離れたかった。今電話で姉の知子の言葉を聞いた後、薫は眉をひそめた。「姉さん何を言っているんですか?急用で勝俊に連絡したんで、すぐに電話を代わってください!」姉は一瞬ためらい、苦しそうに言った。「勝俊——君の夫は、もう死んでいると言った。日本語がわからないのか?」「くそったれ!」薫は怒りが収まらず、思わず汚い言葉を口にした。「あなたたち頭おかしいんじゃない?私にこんな下らない嘘ついて楽しいの?わざとこうして私に罪悪感を抱かせるつもり?演技にしても下手すぎますわ」「勝俊に伝えてください。彼が戻ってこないつもりなら、一生戻ってくるなと。もう外で死んだほうが一番いいかも」薫は憤然として電話を切った。まだ怒りが収まらないから、部屋に掛けてあった結婚写真が入る写真立てを叩き割らせた。斎田は急いで薫を止め、自分の胃病はたいしたことじゃないと宥めた。そして自分のために夫婦喧嘩にならないでと言った。薫はさらに怒った。斎田でさえ自分に優しくできるのに、夫である勝俊は、気分を損ねただけで三ヶ月も家に帰らず、電話すら出てくれなかった。薫はため息をつき、悲しそうな顔つきで斎田の胸に飛び込んだ。「あの時、もし両親が私たちのことを認めてくれたら、私たちはすでに結ばれていたかもね」「丹吾さん、あなたは勝俊より一万倍もいいよ」たとえ魂になっても、存在しないはずの心臓が痛んだ。薫は忘れていたかも。彼女がまだ貧乏だった時に、斎田は留学を理由にして彼女を避けていた。逆に俺が五つのバイトも掛け持ちして彼女の起業資金を支援し、最も辛い時期を共に乗り越えてきたのだ。しかし、薫は感謝の気持ちを忘れ、俺たちが結ばれたのが全部親が無理
薫は結局斎田のために、深夜に十キロ以上遠いところまで車で薬を買いに行った。斎田が胃薬を受け取ったとき、突然目を赤くした。薫は慌てて、急いで原因を尋ねた。俺は目の前の光景を見つめ、また目が暗くなった。斎田は薫の心の中で常に特別な人として存在する。彼が眉をひそめるたびに、薫の心には大きな波が立つ。そして俺は、取るに足らない存在で、死んでも薫の注意を引くことはできなかった。斎田はまだ流れ出していない涙を拭くふりした。「大丈夫、ただ留学していた数年間、胃が痛くて一晩中眠れなかったことを急に思い出しただけ。その時僕の周りには誰もいなかったから」「勝俊のように、薫みたいな賢い妻がいなかったから」薫の目が暗くなり、心痛む表情を浮かべた。「あの頃は苦労したね」幸い今は魂になっているから耐えたが、さもなければ叫び声を上げてしまいたいほどだ。斎田が言っていた「一晩中眠れなかった」のは、実は胃痛のせいではなかった。薫が頻繁に斎田を訪ねていたあの時期、俺は斎田を調査するように頼んだことがあった。彼は外国で何人かの女と付き合い、ギャンブルにも手を染めていた。斎田が帰国したのは、主に彼が大学で多くの科目が不合格となり、卒業が見込めず、両親から仕送りが断たれたため。斎田が薫に近づいたのは、彼女が今うまくやっていて、利用価値があると思われているに違いない。俺はかつて薫にこれらのことを話したことがあった。しかし、薫は信じてくれなかった。それどころか、俺が斎田を陥れようとしていると彼女は断言した。「勝俊、あなたがこんなに心が狭い男だとは思わなかった。丹吾さんに嫉妬してるからって、なんでも言いたい放題じゃないよ」「私は丹吾さんと知り合ってから長い時間が経ったよ、彼の人柄ならは私が一番よく知っている。彼が留学したのは、親に強制されたからだ。もし彼に選択肢ができたら、きっと私を選ぶはずよ」俺は呆然と薫を見つめ、心の中で何度も浮かんだことのある質問を口にした。「もし斎田が薫のそばに残ってくれたら、薫は彼と結婚するんだろ?」薫は少し驚いた。そして何も話さなかった。俺はすでに彼女の目から答えが見えた。おかしい話だが、薫は自分を一回捨てた斎田のことを信頼しているのに、困難な時期を共に過ごした俺を信じようとはし