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第11話

薫が家に帰ったのはすでに夜の11時だった。

斎田は薫が入ってくるのを見て、すぐに駆け寄って彼女の手を握った。

「薫、どこに行ってたの?心配でたまらなかったんだよ。知ってる?一日中君のことを考えてたんだ……」

薫は冷たく手を引っ込めた。

斎田の笑顔が瞬時に固まった。

彼の目には不満が閃いた。

昔は斎田が甘い言葉を使わなくても、薫は必ず従順だった。

けれど今は違った。

斎田は数日前の薫の異常な行動を思い出した。

電話で勝俊に関する連絡を受けてから、薫は変わり始めたようだ。

斎田は歯を食いしばり、それでも追いかけた。

「ごめんね、薫。もしかして、また僕のせいで勝俊さんと喧嘩したの?今すぐ勝俊さんに説明しに行くから……」

薫は顔を上げた。

「勝俊はもう死んでる」

一そう言い終えると、斎田はその場で呆然とした。

「ああ、それは本当に……」

斎田の演技はあまり上手ではなく、むしろひどいと言ってもいい。

今、斎田は力を込めて目を細めたりしていたが、それでも涙の一滴も出てこなかった。

「それは本当に残念だね、勝俊さんはまだ若いのに」

斎田はため息をつき、悲しそうに見えるように努めた。

「でも薫、そんなに悲しまないで。勝俊さんは生前とても楽しく過ごしていたみたいだし、あんなに多くの国や都市を旅行して、僕は本当に羨ましかったよ……」

これは斎田がよく使う手口だ。

薫の前で軽く「勝俊さんが元気に過ごしている」と言って、薫の心の中のわずかな罪悪感を打ち消そうとする。

しかし今日は、この手が効かないようだ。

薫は斎田を見つめ、その目はかつてないほど冷たかった。

「聞くけど、あなたの誕生日の日に勝俊が私に電話をかけてきたのに、どうしてそれをセールスだと嘘をついた?」

斎田は表情を硬くし、すぐに説明した。

「薫はあの日勝俊さんと喧嘩しただろ、彼からの電話が来たらもっと怒るんじゃないかと心配して、それで……」

「じゃあ、どうしてまた応答ボタンを押して、わざと勝俊に私たちの会話を聞かせたの?」

「私はその日の通話記録を見つけたよ。その電話は確かに接続されていた」

薫は斎田をじっと見つめ、相手の顔に穴を空かせようかのようだった。

斎田はしばらくごもっていたが、最後に歯を食いしばって言った。

「僕はうっかり応答ボタンに触れてしまったみたいだ
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