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第5話

海鮮粥を置いた後、薫は手を伸ばして料理を取った。

一口目を飲み込むと、薫は再び眉をひそめた。

しかし、斎田の切実な目を見て、やはり飲み込んだ。

料理が強い唐辛子の匂いがした。

斎田は薫が食べたのを見て、彼女が好きだと思い、笑いながら薫のお碗にたくさんの料理を入れた。

「薫、君が辛いものが大好きなのを覚えているよ。この炒め鶏には特別にたくさんの唐辛子を入れたんだ」

この言葉が出ると、雰囲気が少し固まった。

薫は箸を置き、斎田を見つめた。

「でも、私は辛いものが好きじゃない」

「あなたに言った覚えがある」

斎田は一瞬呆然とした。

明らかに、彼は薫の好みと他の彼女たちの好みを混同していた。

薫は辛いものが食べられない。辛いものを食べると胃が痛くなり、時には一晩中痛くて眠れないこともあった。

この点を知っているので、たとえ自分が辛いものが好きでも、料理に唐辛子を一切入れなかった。

薫はこの数年間、俺にとてもよく世話をされていたから、自分が胃痛を感じた時のことを忘れてしまった。

今、薫の額にはうっすらと汗がにじみ、唇は少し青白くなってきた。

俺は知っている、彼女の胃が痛み始めたことを。

けど斎田は少しでも薫の気持ち悪さに気づいていなかった、

斎田は気まずそうに笑いながら説明した。「海外にいた時期はよく眠れなくて、記憶力も少し落ちてしまったんだ」

「じゃあ、辛い鶏肉炒めはやめて、あっさりしたものを食べてって」

そう言って、斎田は一皿の冷菜を薫の前に差し出した。

激しい胃痛で薫の顔はすでに血の気を失っていたから、冷たい料理を見て、彼女の顔色はさらに悪くなった。

「食べてみて」斎田は熱心に薫を見つめながら言った。「僕が作ったんだ。夏にぴったりで食欲をそそるよな」

今回は、薫は斎田に従わなかった。

彼女はゆっくりと立ち上がり、不快を押さえた。

「ちょっと疲れたから、先に部屋に戻って休みます」

斎田の目に一瞬驚きが走った。

彼が帰国して以来、薫はいつも彼に従順だった。

でも今回は、どうしてこんなに異常なの?

斎田は突然危機感を覚えた。

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