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第6話

寝室に戻ると、薫は床に落ちた結婚写真の前に立ち、ぼんやりと長い間見つめていた。

しかし最後に、彼女は割れた写真立てを拾わず、斎田にメッセージを送った。

「丹吾さん、さっきは気分があまり良くなかっただけで、あなたを無視したわけではないよ」

「謝ります。深く考えないでください」

心臓に小さな穴が開いたようで、風が吹くと鈍い痛みを感じた。

俺は三ヶ月間行方不明になり、まだ死んで間もないのに、妻である薫は一度も電話をかけてこなかった。

しかし、初恋の斎田に対して、薫はこれほどまでに卑屈になることができる。

この瞬間、俺は突然理解した。これまでのあらゆる忍耐や妥協は、ただの自己満足に過ぎなかったことを。

たとえいつか薫が俺の死を知っても、彼女は喜ぶだろう。やっと堂々と斎田と一緒にいられるのだから。

メッセージを送信した後、薫はインスタを開いた。

彼女の高校の同級生であり、俺の同僚が新しいストーリーを上げた——今日は会社の社員旅行。

載せたのは会社みんなの集合写真だった。

薫は突然気づいた、中には俺がいないことに。

同僚はとても親切に文字まで添えた。

「友の勝俊が社員旅行に参加できなかったので、ここで彼の世界旅行の成功を祈ります!」

薫は目を見開き、まるで首を絞められたようだった。

勝俊は怒って3ヶ月間家に帰らなかったのが、実は世界一周旅行に行っていたと?

結婚して五年、無数回の喧嘩をしてきたが、薫の気性がどれほど悪くても、いつも最初に頭を下げて謝るのは勝俊だった。

でも今回は、勝俊がなんと3ヶ月も連絡を取らず、彼女に内緒で旅行に行ったと。

くっさ、よくもそんなことをできるんだ。

薫は胃の痛みを気にしなくなった。

彼女は勝俊に一度目にもの見せてやらねばと思った。

俺は薫がキャビネットの中で何かを探しているのを見た。そして薫が離婚届を取り出した。

俺はフッと笑った。

彼女はすでに準備ができていて、ただきっかけが必要だっただけだ。

薫は離婚届を写真に撮り、俺にラインで送る準備をしている。

しかし、彼女は返事をもらうことはなかった。

薫は自分がブロックされてないかとチェックし、そして目を大きく開いた。

「よくも私をブロックするなんて、本当に冷徹だわ」

彼女は忘れていたのは、彼女自身が喧嘩して腹を立たせ、俺の連絡先を削除したこ
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