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第69話

やっと食事が終わって、横山が逃げるように部屋を出た。

出るときに、ドアを優しく閉めた。

時計を見て、夜の10時だった。

彼女が帰らなければならない時間だった。

彼女は話そうとした。

「体を拭いてくれない」達也が突然言いだした。

真弓は彼を見た。

「当分の間シャワーを浴びてはいけないとお医者さんに言われた」

彼女も知っていた。

彼の体を拭くのがいいのか?!

「男に触られるのが嫌いなんだ」達也が説明した。

真弓が速く考えていた。

横山が男で、ヘルパーさんも男だった。

「拭かないと、今夜は眠れないと不安になって」達也が言った。「お願い」

真弓は深呼吸をした。

水の恩を受けたら、湧き水で報いるようにと古人が言っていた。

今回、達也からの御恩は水の恩をはるかに超えた。

彼女はバスルームに行き、お湯を洗面器で持ってきて、タオルを絞って彼に近づいた。

「目を閉じて」真弓が言った。「まず顔を洗う」

達也が協力して目を閉じた。

温かく柔らかいタオルで彼の顔を優しく拭いていた。

それから、真弓がタオルを絞って彼の首を拭き始めて、鎖骨のところまで拭いた時に聞いた。「体も拭くのか?」

「うん」

真弓はタオルを置き、無理をして達也の入院服を脱いだ。

達也の裸の胸が真弓の目前に現れた。

男を見たことがないわけではなかった。

男の裸の上半身を見たことがないわけではなかった。

千葉グループにいた頃は、たまにモデルの撮影現場に立ち会い、裸の上半身の写真を撮ったりしたのがよくあったので、すでに慣れていた。

この瞬間、彼女は恥ずかしくて不思議に赤面となった。

達也の腹筋ラインが完璧でセクシーだった。

彼女はタオル越しに彼の胸筋と腹筋の硬さと弾力性を感じることができた。

顔が赤くなった真弓は真剣に拭いた。

そして彼の腕と太ももを丁寧に拭いた。

拭き終わって、真弓は少し息を切らしていた。

疲れたのかそれとも......

真弓は洗面器を持って離れようとした。

「一か所忘れた」達也が言った。

真弓の体がわずかに震えた。

無意識のうちに指が引き締まった。

達也の奴はますます調子に乗って来た。

「僕がやるよ」達也が説明した。

真弓は歯を食いしばった。

達也が故意にやったと思った。

「水を入れ直して来る」

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