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第68話

真弓はついに達也を助けて病床に戻した。

達也が泊まったのはビップ病室で、スイートルームだった。看護師とヘルパーさんは客間にいて、寝室には彼女と達也の二人だけだった。横山もどこかに行ったか分からなかった。

二人だけがいる時に、突然気まずくなってきた。

「果物を食べたいか?」真弓は話題を見つけた。

「うん」

「リンゴ?」真弓は部屋の果物を見て尋ねた。

「いいよ」

「わかった」

真弓はリンゴを取って洗ってきて、ナイフで皮むき始めた。

彼女は果物が好きではないので、家に果物がなかった。しかも、彼女はいつも忙しいから、海外でも帰国してから千葉グループにいた時、そして今の星野グループにいる時でも、果物を皮剥く時間がなかった。だから、剝き終わったリンゴが凸凹で醜かった。

真弓は少し恥ずかしかった。

彼女は達也を見上げて、彼の目に明らかな微笑みが浮かんでいた。「できたの?」

「気にしないで」

そう言って、真弓は後ろからリンゴを取り出した。

達也はリンゴを見てコメントした。「特別だ」

真弓は褒められたかどうか分からなかった。

「食べる?」

「食べさせて」

「自分で食べれないのか?」

「手に力が抜けた」

では、さっきトイレに入って行ける人は一体誰か?

真弓はリンゴを達也の口に入れた。

達也は一口噛んで、彼の唇が真弓の手にそっと触れた。

真弓の指がわずかに震えた。

指の間に温かいものが伝わって来た......

達也を見て、彼がリンゴを噛んでいた。「とても甘い。食べてみない?」達也が言った。

「いや、果物が好きじゃない」真弓が断った。

彼女は少しせかせかした。

達也が軽く笑いながら、真弓が食べさせてくれたリンゴを一口一口で食べた。

やっと1つ食べ終わった。

真弓は急いで手を洗いに行った。

「胃が悪いか?達也が率先して話しかけた。「胃が出血したことがあるとおじさんに言われた」

また、二人の関係が不自然にならないようにしたかった。

「その時飲みすぎた」真弓が軽く言った。

「あの時だけだったのか?」達也が問い詰めた。

「......それだけじゃなかった」真弓は素直に言った。「女性は外で交際するとよくセクハラされるので、そうさせないためにできるだけ多く飲むしかなかった」

達也が喉仏を動いた。「千葉文哉のために
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