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あなたは吹雪の中から歩いてきた
あなたは吹雪の中から歩いてきた
Author: 清らかな梔子

第1話

私がコーヒーを持ってバルコニーに上がったとき、松田泰雄と宮脇圭織が話をしていた。

「ただの檀木の数珠じゃない。そんなに嫌いなの?」

松田泰雄はタバコを一本取り出し、目を細めて宮脇圭織を見つめた。

「もともとこういう物は好きじゃないんだ。結婚した後、毎日それを見るなんて嫌だよ」

宮脇圭織はワイングラスを手にしながら、口元に微笑を浮かべて近づいた。

「それとも、私の婚約者さん、それが捨てられないの?」

私は言葉を発することなく、無意識に息を止めて松田泰雄の返事を待っていた。

彼はどうするのだろう?

松田泰雄は少し戸惑ったようだった。

眉をひそめ、左手で無意識に右手首を触った。

一瞬、彼が断ると思った。

しかし、彼は無表情のまま淡々と「ただの数珠だよ、もう飽きた」と言って、バルコニーから隣の小屋裏にそれを放り投げた。

私は唇を強く噛んだ。痛みの後に、鉄のような味が口の中に広がった。

しかし、感じていたのは、胸をえぐられるような痛みと、心の奥から湧き上がるどうしようもない苦しみだった。

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