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第8話

原寿光はすぐに兄を別の病院に移し、山崎市で最高の医師を手配してくれた。

医師は兄の状態を再度検査した。

病院を出ると、原寿光は私を彼の家に連れて行った。

私の表情は、ためらいがちで、その気持ちが顔に出ていたのだろう。

原寿光は指紋でドアを開け、冷静で感情のない声で私に言った。

「安心してください。私は紳士ではありませんが、違法行為はしません」

私は首を振り、原寿光について中に入った。

部屋は広く、そしてとても清潔だった。人の気配が全く感じられないほど、清潔すぎる。

私たちは特に話すこともなかった。

彼はキッチンに向かい、私は一人でソファに座っていると、ふと本棚のそばのキャビネットに見覚えのある写真が置いてあるのに気づいた。

山崎市高校の卒業記念写真集だ。

私と松田泰雄は山崎市高校を卒業したのだが、しかもこれは私が卒業した年のものだった。

ここには私の写真も、松田泰雄の写真もあるのだろうか?

そっとページをめくろうとしたとき、原寿光が後ろから出てきた。

彼は二本のミネラルウォーターをキャビネットに置き、一方の手で写真集を押さえて私の動きを止めた。

「見る価値はないよ」

そうだ、他人の物に手を出してはいけない。

自分に少し腹が立ち、話題を変えた。

「それにしても、私と兄を助けてくれてありがとう。お金は後で少しずつ返します」

原寿光はうなずかなかった。彼は私よりずっと背が高く、頭を下げて突然言った。

「実は、君はお金を返す必要はない。むしろ、以前谷口さんに頼んだ手伝いをしてもらった方がいい」

結婚?

私はその場で固まった。

原寿光は私の疑問に気づき、さらに説明を続けた。

「谷口さんは知らないかもしれませんが、うちの家業はかなり大きいんです。外部に知られているのはほんの一部で、多くは祖父がまだコントロールしています」

「祖父の意向は、私が結婚するまで財産を私に移せないということです」

私は自分を指差し、「でも、原さんにはたくさんの人が好意を持っているでしょう?」と聞いた。

彼は私を見つめ、

「それはもっと面倒だよ。結局、ゲームが終わった時に絡まれてしまったら大変だから」

と言った。

私は黙った。

なるほど、彼が私に声をかけた理由が分かった。

原寿光は私と松田泰雄のことを知っていた。

私は彼を愛することはないし
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