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第9話

私は原寿光の家に一晩泊まり、客室で寝た。

翌朝目覚めると、松田泰雄と宮脇圭織の結婚のニュースがトレンドになっていた。

SNSを開くと、トップには二人が手を繋いで記者会見に出席する動画があった。

だが、目の鋭いネットユーザーたちがコメント欄で何かを探し始めた。

「ええ、皆さん気づきました?今回の記者会見で、松田さんの右手首にはあの檀木の数珠がつけられていませんでした」

「松田さんの檀木の数珠はとても大事なものじゃなかったの?いつも手放さないって言われていたのに、どうして急に外したのか、ふふふ、これには何か話がありそう!」

「松田さんの以前の動画をちょっと検索してみたけど、あの檀木の数珠は有名なお寺で求めたものだよね。きっと特別な人が彼のために祈願したんだ、別の人と結婚することになったから、外さざるを得なかったのかな」

「上のコメント、そうそう!その話を聞いて、数年前にお寺で松田さんの秘書、谷口幸優に会ったことを思い出したわ。写真も何枚か撮ったはず、探してみる……」

「なんてこと、すごい雪だったのに、彼女はとても敬虔にひざまずいて祈っていた」

「そうだ、私も目撃したよ。三千段の階段を、一段一段ひざまずきながら登っていったんだ」

「一体どんな大切な人に何が起こったら、谷口さんがそんなに祈るのだろう?」

SNSでの議論は次第に話題が逸れて、私に移っていった。

私に出会ったネットユーザーが数枚の写真と動画を投稿した。

吹雪の中、私は石段にひざまずき、両手を合わせて寺の方向を見ている姿だ。

松田泰雄が以前に出した声明があるから、誰も私が彼のために祈っているとは思わないだろう。

仮に誰かが気づいても、証拠はない。

これ以上見ていても仕方がないと思い、私はスマホを閉じて、荷物を整理しに松田氏に向かうことにした。

行った時、松田泰雄は会社にいなかった。

これも良かった、無駄に絡む必要がない。

私が荷物を持って松田氏を出ようとしたその時、友達から電話がかかってきた。
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