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第11話

松田泰雄がこんな反応をするのも無理はない。

私は彼に、自分が寺で数珠を求めたことだけを伝え、その過程については何も話していなかった。

「もう一度言ってくれないか?」

松田泰雄は一語一語を強調して自分の質問を繰り返した。

生放送のカメラが彼の表情をアップにする。

彼の目は冷たい。

しかし、モニター越しにでも、その目には信じがたい思いと少しの動揺が混じっているのが見て取れた。

記者はスマホを取り出し、松田泰雄の目の前に掲げた。

「松田さんが信じないなら、自分で見てください」

「今、ネットには数珠を求めたときの写真や動画が溢れていて、感動するネットユーザーがたくさんいます!」

記者のスマホには、たぶんその時ネットに投稿された映像が映し出されていた。

松田泰雄は手を伸ばしてそれを受け取った。

彼の指先はわずかに震えているのが見えた。

「私……」

彼はついに口を開き、声がかすれていた。

「知らなかった……ただの普通のものだと思っていた……」

隣で人々に囲まれた宮脇圭織は松田泰雄を見つめ、顔色が青ざめていた。

ここ数日、ネットには二人の結婚のニュースが溢れていたので、このタイミングで別の女性との話が出るのは、彼女にとっては気まずいだろう。

しかし、松田泰雄は完全にそれに気づかず、記者のしつこい質問には耳を貸さなかった。

スマホを取り出して電源を入れ、電話をかけた。

近くにいたゴシップ好きな人たちが生放送のカメラを寄せて、音声が流れてきた——

「谷口さんにかけるのですか?」

だが、私のスマホは鳴っていなかった。

さっき戻る途中、携帯の電池が切れていてシャットダウンしていたのだ。

しかも、たとえ私の携帯が切れていなくても、松田泰雄が電話をかけてくるはずがない。

彼の別荘を出た日から、私は彼をブラックリストに入れていたから。

生放送の向こう側で、電話の呼び出し音が鳴り続けていた。

松田泰雄は眉をひそめ、顔色はますます悪くなった。

電話が自然に切れ、横にいる宮脇圭織は歯を食いしばり、松田泰雄に手を添えた。

「今はそんな時じゃないわ。後で谷口さんに感謝する機会があるから」

宮脇圭織の言葉で、松田泰雄はまるで夢から覚めたように何かを思い出し、すぐに表情を整えた。

しかし、声を発する暇もなく、記者が再び質問した。

「松田さん、
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