さようなら、愛の檻

さようなら、愛の檻

last update最終更新日 : 2025-01-06
による:   致ちゃん  完結
言語: Japanese
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概要
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概要

不倫

クズ男

ドロドロ展開

スカッと

逆転

因果応報

妊娠

余命3ヶ月の不治の病にかかってしまった。 夫の今後の生活を心配していた。「私がいなくなった後、彼はどうするんだろう……」 しかし、ある夜、ぼんやりとした意識の中で、夫と姑の話し声が聞こえてきた。 「篠原澪があの遺産を持ってなかったら、誰があんな女と結婚するもんか!」

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第1話

「母さん、声を小さくしてよ。澪はまだ寝てるんだから」「ふん、こんな時間にまだ寝てるなんて!ご飯を作ってから寝たんじゃなかったら、きっちりお灸を据えてやるところだわ!」ドアノブに手をかけていた私が、ピタリと止まった。これが、いつもは優しくて温かい姑の姿?「母さん、もうちょっとの辛抱だよ。澪が昨日、ついにあの財産を出すって言ったからさ。全部俺の口座に移したら、すぐあのバカ女とは離婚するから」西村正樹はまるで未来の幸せな日々を思い浮かべているかのような、明るい調子の声だった。「のぞみちゃんはもう妊娠してるしな。母さんだって早く孫が欲しいだろ?篠原があの遺産を持ってなかったら、誰があんな女と結婚するもんか!」その一言を聞いた瞬間、胸の奥から怒りがこみ上げ、ドアを蹴破って飛び出したくなった。けれど、指が肉に食い込むほどギュッと握りしめて、痛みで冷静さを取り戻した。今ここで飛び出して彼らの企みを暴いたとしても、せいぜい離婚するだけだ。彼らは何の罰も受けない。どうせあと3ヶ月しかないんだ。だったら、刺し違える覚悟でいこう。そう決意した私は、ドアをゆっくりと押し開けた。西村と姑はまるで俳優のように、一瞬で笑顔を作り上げた。「澪!よく寝たね、俺と母さんはずっとお前を待ってたんだよ」西村は私の手をつかもうとしたが、私はその手を振り払い、自分の席に向かった。「本当に図々しいわね!このテーブルいっぱいの料理、私が作ったのよ!よくもまあ、勝手に先に食べられるわね!」姑は一瞬、目を見開いて驚いたようだったが、すぐに平静を装った。「澪、正樹と母さんは、あなたを心配してたのよ。あんなに長い間寝てたら、きっとお腹が空いてるだろうってね。ほらほら、早く食べましょう」西村は眉間にしわを寄せ、何か言い返そうとしたが、私は彼の言葉を遮った。「ねえ、正樹。今日お医者さんに言われたのよ。『心の中に溜め込むのはよくないから、ストレスを発散させなさい』って。だから、私もこう言わせてもらうわ」そう言いながら、彼にスープをよそった。見かけだけは、いつもの「良妻賢母」のような私。西村はようやく不機嫌な表情を引っ込め、まるで愛を込めているかのような目で私を見つめた。「お前も大変だな。俺たちはちょっとく...

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7 チャプター
第1話
「母さん、声を小さくしてよ。澪はまだ寝てるんだから」「ふん、こんな時間にまだ寝てるなんて!ご飯を作ってから寝たんじゃなかったら、きっちりお灸を据えてやるところだわ!」ドアノブに手をかけていた私が、ピタリと止まった。これが、いつもは優しくて温かい姑の姿?「母さん、もうちょっとの辛抱だよ。澪が昨日、ついにあの財産を出すって言ったからさ。全部俺の口座に移したら、すぐあのバカ女とは離婚するから」西村正樹はまるで未来の幸せな日々を思い浮かべているかのような、明るい調子の声だった。「のぞみちゃんはもう妊娠してるしな。母さんだって早く孫が欲しいだろ?篠原があの遺産を持ってなかったら、誰があんな女と結婚するもんか!」その一言を聞いた瞬間、胸の奥から怒りがこみ上げ、ドアを蹴破って飛び出したくなった。けれど、指が肉に食い込むほどギュッと握りしめて、痛みで冷静さを取り戻した。今ここで飛び出して彼らの企みを暴いたとしても、せいぜい離婚するだけだ。彼らは何の罰も受けない。どうせあと3ヶ月しかないんだ。だったら、刺し違える覚悟でいこう。そう決意した私は、ドアをゆっくりと押し開けた。西村と姑はまるで俳優のように、一瞬で笑顔を作り上げた。「澪!よく寝たね、俺と母さんはずっとお前を待ってたんだよ」西村は私の手をつかもうとしたが、私はその手を振り払い、自分の席に向かった。「本当に図々しいわね!このテーブルいっぱいの料理、私が作ったのよ!よくもまあ、勝手に先に食べられるわね!」姑は一瞬、目を見開いて驚いたようだったが、すぐに平静を装った。「澪、正樹と母さんは、あなたを心配してたのよ。あんなに長い間寝てたら、きっとお腹が空いてるだろうってね。ほらほら、早く食べましょう」西村は眉間にしわを寄せ、何か言い返そうとしたが、私は彼の言葉を遮った。「ねえ、正樹。今日お医者さんに言われたのよ。『心の中に溜め込むのはよくないから、ストレスを発散させなさい』って。だから、私もこう言わせてもらうわ」そう言いながら、彼にスープをよそった。見かけだけは、いつもの「良妻賢母」のような私。西村はようやく不機嫌な表情を引っ込め、まるで愛を込めているかのような目で私を見つめた。「お前も大変だな。俺たちはちょっとく
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第2話
家に帰った後は、のんびりとシャワーを浴びた。洗濯かごに入った汚れた服はそのままにして、好きなドラマを見ながらベッドでゴロゴロしていた。しばらくすると、西村が帰ってきた。「おい、服が洗ってないじゃないか。明日もこれ着なきゃいけないんだぞ」私は彼を冷ややかに一瞥し、口に入れていた果物の種を吐き出しながら言った。「へえ、自分の服だって気づいてたんだ?私の服がそこに1枚でもあるか見てみなよ。自分の服は自分で洗え、いい大人なんだからさ」西村は何か言い返そうとしたが、その瞬間、突然電話が鳴った。おそらく、良彦の両親からの電話だろう。電話を切って戻ってきた時、彼の顔には怒りが浮かんでいた。「おい、良彦の学費と仕送りを止めたのか?あいつはもうすぐ大学受験だぞ。こんな時に止めるなんて、あいつの将来を潰す気かよ!」「良彦はあんたの甥であって、私の甥じゃないからね。あの子の将来を心配してるなら、あんたの金で払えばいいんじゃない?」私の言葉に、西村は何も言い返せなかった。甥の学費は月に30万円もかかる。仕送りなどを合わせると、月に50ー60万円の出費になる。「なあ、妻と夫ってのは一心同体だろ?俺の甥はお前の甥でもあるじゃないか」私は黙ったまま、ふてくされたように布団の中に潜り込んだ。彼は急に昨日私にサインするよう頼んだ「財産共有の合意書」を取り出してきた。まさか、この状況でこの紙を出してくるとはね。「絶対にサインしないわ。もしかしたら明日、あんたがこの金で甥の学費を払うかもしれないからね」西村のような人間は、強気に出すぎると何をしでかすか分からない。だからこそ、「怒らせずに痛い目を見せる」のが一番の作戦だ。彼がどれほど必死に金を手に入れたくても、「大好きな甥のせいで金が手に入らない」のだから、これ以上の仕打ちはないだろう。西村は私を抱きしめ、低い声で誓った。「この財産は俺たちのものだ。絶対に良彦みたいなクソガキには使わないよ。俺を信じてくれ、頼むよ」もう疲れた。その夜、私は彼の言葉を無視してすぐに眠りに落ちた。次の日の朝、11時まで寝てやった。6時ごろ、姑が部屋に入ってきて「朝ごはんを作れ」と叫んでいたが、私は一言罵倒して追い出してやった。好きなだけ寝られるのは最高の気分だ。まさ
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第3話
あの家を不動産会社に出した。彼らが住んでいた家は、なんだか縁起が悪い気がした。すぐに新しい家を見つけた。職場からも近い、駅にも近い便利なマンションで、ずっと前から目をつけていた場所だ。ここ数日、果歩が雇った私立探偵が、西村とその愛人の親密な写真を次々に送ってきた。その愛人、夏川千歌は私も知っている。芸能界で有名な「18歳のネットアイドル」だ。美人なだけでなく、ゴシップやスキャンダルの話題作りが得意なタイプだ。西村は彼女の芸能事務所ではただのマネージャーにすぎない。一体どうして、彼女が西村なんかと関係を持つのか、全く理解できない。写真の中の夏川の腹は少し膨らんでおり、どうやら妊娠数ヶ月が経過しているようだ。二人のイチャつく写真を何枚か印刷した。将来、何かの役に立つかもしれないからだ。3日目のことだった。私は鍵を使って、彼らが住む家のドアを開けた。家の中の三人が食事をしていた。ああ、良彦は退学処分を受けたんだっけ。良彦は私に気づくと、まるで野良犬のような鋭い目で私を睨みつけた。私は家の中の様子を一瞥し、部屋の隅々に置かれた彼らの荷物を確認すると、後ろに控えていた引っ越し業者の作業員に合図を送った。良彦の母、橘静乃は突然パニックに陥り、ドアの前に立ちふさがって作業員を中に入れさせまいとした。「お前たち、うちに何しに来たんだ!そのテレビを持っていくな、買ったばかりなんだぞ!」「あなたの家ですって?私の記憶が正しければ、この家の名義にあなたたちの名前なんて入っていないはずよ。早く荷物を運び出して。今まで使っていたものに対して賠償を求めるつもりはないから」良彦の父である西村明人は典型的な亭主関白な男で、声を荒げながら罵り始めた。「正樹は自分の女房一人も抑えられないのか?だったら、俺が代わりに躾けてやる!」そう言って手を出そうとする気配を見せたが、私の隣にいた警備員が前に出てきた。身長188センチ、腹筋バキバキで体格もがっしり。明人はこの状況を見てすっかり萎縮してしまった。本気だと察した彼は、橘を連れて私に跪き始めた。「澪ちゃん、頼むよ。俺たちを追い出したら、行くところがなくなっちまう!」「そう?田舎にある古い家がまだ残っているじゃない。ちょうど広々としていてあなたたちにはぴったり
last update最終更新日 : 2025-01-06
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第4話
その後、西村から電話がかかってきた。叱りに来るのかと思いきや、謝罪だった。「澪、嫂さんにはきつく言っておいたよ。彼らも今は田舎の家に引っ越したから、もう怒らないでくれ。母さんも俺もお前に会いたいんだ。早く家に戻っておくれ。前みたいに一緒に暮らそう、なあ、澪。澪?聞いているか?」私が答えないのを見て、西村の僅かな忍耐心がついに尽きたようだ。私の財産がまだ手に入らないことに焦りを感じたのか、声を落として懸命に説得し始めた。「明日お前の会社の下まで迎えに行くよ。こんなこともうやめよう、澪」私が無言を貫くと、西村はプライドを守るように電話を切った。私の目の前には、西村と夏川がAマンションに入っていく写真が置かれていた。あれは結婚1年後に、西村が家庭貯金で購入したものだ。「将来の子どもの通学に便利だから」ともっともらしい理由をつけていた。その写真を果歩の兄であり、業界で有名な婚姻弁護士の椎名亮介に送った。「写真は彼の不倫の証拠になりますね。彼に財産を一切持たせないことは可能ですが、彼の私有財産を半分分けるのは少し難しいかもしれません」椎名からすぐに一連の音声メッセージが送られてきた。彼の声がなんとも心地よいものだった。残念ながら、前のことで私の心はまるで石のように固くなっていた。「証拠が足りないってことですか?」「そうですね。決定的な証拠が不足しています。西村さんは『友人の奥さんを送っただけ』と言い訳するでしょうし、この写真は親密そうに見えても、ほとんどがカメラの角度の問題で説明がつきます」「分かりました。もっと有力な証拠を見つけたら、また送りますね」翌日、デスクで作業していると、配達員が突然オフィスに入り、99本の赤いバラが届けられた。オフィス中の注目を集める。隣の張本が羨望の目で言った。「澪ちゃん、あなたの旦那さんって本当に素敵ですね。結婚3年経っても、まだこんなにラブラブなんて」私は微笑んでその花束を彼女のデスクに置いた。「この前、バラでお風呂に入りたいって言ってたでしょ?ほら、あげるよ」「澪ちゃんありがとう!お二人が早く赤ちゃんを授かりますように!」エレベーターを降りて会社の建物の前に出ると、西村の車が停まっているのが目に入った。副運転席の隣に立って、いかにも気取った様子で
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第5話
数日後、探偵から送られてきた西村と夏川のアパートでの行動記録を眺めていた。2人がいない時間を狙って、ちょっと「訪問する」ことにした。指紋ロックの認証は消されているだろうけど、鍵を使えば簡単にドアを開けられる。部屋は散らかり放題で、西村への嫌悪感がさらに増した。寝室の隅に目立たない小型カメラを設置した。椎名にも確認済みだ。自分の家に監視カメラを置くのは違法ではない。その後、近くのカフェでお気に入りのラテを注文して一息ついた。「安心して。西村は今や私に完全に支配されてるから。奥さんと離婚するつもりなんだって」このカフェはプライベート性が高いけれど、防音はあまりよくない。「でも、彼と結婚なんてダメよ。そうしたら、俺の子どもが他人を父親と呼ぶことになる」おや、これは大スクープ。そっと耳を傾けたが、その後は聞きたくもないキスの音が聞こえた。西村、今ごろ自分が勝者だと喜んでるだろうけど、夏川に浮気されたことも気づいてなかったね。しばらくしてから、やっと音が止んだ。こっそり頭を出して様子を伺うと、夏川はある若い男の腕にしがみついていた。これでやっと納得した。夏川がどうして西村なんかを選んだのか不思議だったけど、どうやら急いで子どもに「父親」を見つけたかっただけ。夏川はまた西村と一夜を共にしていた。私は気持ち悪くなって、それ以上見る気もせず、すぐにその動画を椎名に送った。「これなら決定的な証拠として十分です、篠原さん。いつ離婚訴訟を起こす予定ですか?」少し考えた。西村が今住んでいる家は、結婚してから私が自腹で買った家だ。この家を取り返さない限り、安心なんてできない。そんなことを考えていた時、姑から電話がかかってきた。もしかして前の数日、私の態度が効いたのか、姑の声は普段よりも弱々しく、どこかビクビクしていた。「澪、前に話してた家のことだけど……B高級マンションのことだよね?あのね、Aマンションは将来の資産価値が上がると思うから、いっそのこと今住んでいる家を売って、あなたが3億円を出して、B高級マンションの家を買うのはどうかしら?」3億円?この婆、よくもそんなバカげたことを平気で言えるもんだ。しかも「今住んでいる家」と言っているが、それは結婚後、私が自腹で買った家だ。「それで、あな
last update最終更新日 : 2025-01-06
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第6話
すぐに手続きが進み、お金も振り込まれた。その後、姑と西村はしょっちゅう電話をかけてきて、「新しい家はどうなった?」と聞いてきたが、私は全部適当に流した。姑は田舎の実家であまり良い暮らしをしていないらしい。橘は昔の私のような「いい嫁」ではない。市内の無料の家と蓄えがなくなった彼女は、息子がいるのをいいことに、姑に冷たい態度を取っているらしい。でも、そんなの私には関係ない。ある晴れた日、私は浮気の証拠と離婚協議書を西村のオフィスに送った。証拠は完璧だ。もし西村が控訴してきたら、彼の損害はもっと大きくなるだろう。「高級マンションに住む」という良彦一家の夢は、これで完全に終わった。もうこれで一件落着だと思っていたが、彼らの「図々しさ」は私の想像を遥かに超えていた。「澪ちゃん、下に行って見てきなよ」張本は何とも言い難い表情をしている。「あの姑……いや、元姑が、下で騒ぎを起こしているよ」私は困惑している。まさか、彼らがまた私に絡んでくる理由なんて、全く思い浮かばない。階下に降りると、すでに一群の野次馬が集まっており、彼らはひそひそと何かを話し合っていた。人混みの中心にいるのは、元姑だった。今までの小綺麗な姿はなくなった。金がなくなれば、明人一家が彼女に優しくするはずもない。きっと「飯を食わせてやるだけありがたいと思え」ぐらいにしか思っていないのだろう。「うちの嫁はな、ここの会社で働いてるんだよ!子供の一人も産まずに、離婚した後は家を売り払って、私に一銭も渡さないのさ!こんなに不幸な人生を送るなんて、私が一体何をしたって言うのさぁ!」元姑の泣き叫ぶ声を耳にして、私は人混みに身を潜めていることを心の底から幸運に思った。「しかも、自分の甥っ子を助けようともしない!家族をバラバラにしやがってさ!なんでこんな女が嫁に来ちまったんだ!」やがて、誰かが彼女に問いかけた。「お婆さん、その嫁さんって誰なんですか?」「この会社にいる篠原澪って女さ!表向きは大人しそうな顔して、裏ではこんなに酷い奴だってこと、みんな知らないだろ!」そう言いながら、地面に転がって大騒ぎし始めた。野次馬が次々と集まっており、会社の警備員がようやく動き出し、彼女を追い払おうとする。会社に戻ると、同僚たちは
last update最終更新日 : 2025-01-06
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第7話
すべてが一段落したあと、果歩がどうしても私を病院に連れて行った。「先生、間違いではありませんか?2ヶ月前、あと3ヶ月の命だって……」「この2ヶ月間、何か体調の不調を感じましたか?」……病院を出たあとも、現実感が湧いてこなかった。果歩は私を抱きしめ、涙が止まらなかった。「亮介兄に予約してもらって、レストランでお祝いしましょう」そう提案されたが、私は断った。喜びが一気に押し寄せてきて、なんだかどうしていいのかわからなかったから。医者は、前回の検査結果が誤診だった可能性があると言い、1ヶ月後に再検査を勧めた。数ヶ月後、果歩とショッピングしているとき、偶然西村と遭遇した。夏川が男の子を出産し、西村はやけに得意げな態度だった。「篠原、お前みたいな女は一生孤独で終わるのがお似合いだ」私は彼に親子鑑定をするよう勧めた。その後、彼らは大喧嘩になり、夏川の浮気相手が西村を叩きのめし、彼は病院送りになったと聞いた。西村は仕事を失い、財産も夏川にほとんど移され、人生のどん底を味わうことになった。果歩は何度も、「うちの兄のことどう思う?」と私に尋ねてきた。愛情?それには近寄らないほうがいい。5日連続で残業したあとのこと、ついに私の限界が近づいていた。外に出て出前を取りに行ったとき、茂みの中でちらつく影を見つけた。何が起こったのか理解する間もなく、西村がナイフを持って私に向かって飛びかかってきた。もう一人がすぐに現れ、西村と取っ組み合いを始めた。彼らの争いの音はすぐに多くの人を引き寄せ、私は慌てて警察に通報した。気づけば、それは椎名だった。西村が警察に連れて行かれるとき、私に向かってこう言った。「篠原、お前を絶対に許さない」「どうしてここにいたの?腕が怪我してるじゃない!」私は椎名を引き寄せ、オフィスの救急箱を探した。それはナイフでできた切り傷で、血がにじんでいたので、少しひどく見えた。「澪」椎名は私を見つめた。上の灯りが彼の瞳に落ち、まるで星々のように輝いていた。「中三のとき、家で不幸があって、生きる意味を失いかけた僕、妹を残して死のうと思ったほどだった。そのとき、ある女の子に出会ったんだ。彼女は僕にキャンディーをくれた」椎名はポケットを探し、キャンディーを差
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