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第0228話

綿はスマホを握りしめ、その瞬間、心の中で確信が芽生えた。

彼は夜中に自分を見つけられなくて、焦っていたんだ。

彼も、ついに自分に対して感情が芽生えたってこと…だよね?

「明日、退院するのか?」と輝明が突然問いかけてきた。

綿がスマホを閉じ、顔を上げると、輝明はドライヤーを手にして髪を乾かそうとしていた。

「うん」綿は小さく頷いた。

「韓井司礼に迎えに来てもらわなくていい。俺が送る」と言いながら、彼は髪を乾かし始めた。

綿は布団を引き寄せ、少し不満そうに呟いた。「高杉さんにそんな手間をかけなくても」

「ふっ」と彼は軽く笑い、髪をかき上げてドライヤーのスイッチを切った。

ドライヤーを適当に引き出しに放り込み、彼女に向かって冷静な視線を送った。「俺に迷惑をかけたくないなら、大人しく俺の言う通りにしろ」

綿は内心で呟いた。「この人、本当に理不尽で強引なんだから」

「私の身分証、明後日には出来るって」綿は伝えた。

「分かった」彼は短く答え、そのままソファに横になった。

綿は彼を見つめ、心の中で何かがざわめくのを感じた。

三年間の結婚生活で、彼が自分にこんなに優しくしてくれたことなんて一度もなかったのに…。

今さら、何で「良い夫」なんて演じる必要があるの?

綿もベッドに身を横たえた。

夜中の二時。今夜は、いつも感じていた不安がまるで嘘のように感じられなかった。

二人の呼吸は静かに整っていたが、どちらも眠れずにいた。

綿は体を横にして、薄暗い部屋の中でぼんやりと光るベッドサイドランプに照らされ、輝明の横顔がかすかに見えていた。

「輝明」彼女はそっと彼の名前を呼んだ。

彼はただ目を開けて彼女を見ただけで、何も言わなかった。

「私がまだしつこく離婚を拒んだら、どうするつもり?」綿の声は静かで、夜の静けさに染み込んでいくようだった。

彼はしばらくの沈黙の後、静かに答えた。「俺はどうしても嬌と結婚しなきゃならないんだ」

綿は布団を握りしめ、彼の言葉に胸が締め付けられた。「嬌は俺のために、あまりにも多くのものを捧げてきたんだ」

「じゃあ、私は?」綿の声は震えていた。「私だって、あなたのためにたくさんのものを捧げてきたのに」

命さえ惜しまなかった。

彼のために何もかも捨て、ただ彼のそばにいるために全てを尽くしてきた。

三年間、独りで夜を
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