共有

第0235話

嬌は突然、輝明の手をそっと握りしめ、彼の横顔を見つめながら、記者たちに「そうだ、桜井綿と離婚手続きをしている」とはっきり言ってほしいと願っていた。

記者たちはその小さな動きにすぐ気付き、カメラがぐっと寄った。

綿は、自分が二人のそんなやり取りを見ても、もう心が揺れないと思っていた。

でもその瞬間、やっぱり少しイライラした。二人がもう隠そうともしていないことに腹が立ったのだ。

今は全国生中継の記者会見だ。もし、両親や祖父母がこれを見たら、きっと激怒するだろう。

「桜井綿とは、確かに……」輝明がそう言いかけたその時、会場の外が突然騒がしくなり、みんなが「誰だ?」、「誰が来た?」とざわめき始めた。

全員が一斉に外を見ると、美香が二列のボディーガードを従えて堂々と入ってくるのが見えた。

彼女は黒のベルベットスーツを着て、厳しい表情でステージの下に立ち、輝明をじっと見つめた。

輝明は一瞬戸惑った。どうして祖母がここに?

次の瞬間、美香の視線が嬌に移った。

嬌は思わず唾を飲み込み、無意識に輝明の後ろに隠れた。実際、彼女は美香を恐れていた。

美香は嬌を冷たく睨み、「輝明、あんたは陸川嬌のためにわざわざ記者会見まで開いたの?」と厳しく言い放った。

記者たちは一斉にカメラを構え、直感的に次に大きな展開が待っていることを感じ取っていた。

嬌は恐る恐る、「おばあさま、あたしは……」と口を開いたが、

「黙りなさい!」と美香は鋭く言い放ち、その言葉を遮った。

嬌の顔は一瞬で真っ青になった。美香の厳しさには全く情けがなかった。

美香は二人を見下ろし、皮肉たっぷりに言った。「記者会見だって?まるで二人がここで結婚発表でもしているみたいね!

「輝明、あんたの記者会見にこの女を引っ張り上げるなんて、一体何を考えてるの?今すぐ下ろしなさい!」

その言葉に、会場内の人々は驚きを隠せなかった。

「下ろしなさい」とはっきり言い切ったその言葉が、まるで命令のように響いたからだ。

嬌はその場で固まってしまった。これだけの記者が見ている前で、美香が下ろさせるなんて、顔を潰すようなものじゃないか?

彼女だって陸川家のお嬢様なのに。

「おばあちゃん、冗談はやめてくれ。今、重要な話をしているんだ」輝明は少し身をかがめ、低い声で言った。

しかし、美香は取り合わず、そのままステージに上がった。

美香の後ろについていたアシス
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status