共有

第0239話

綿が夕食を食べていたとき、突然、美香から電話がかかってきた。

「綿ちゃん、明日の午後、おばあちゃんは昔の友人たちとお茶会に行くんだけど、一緒にどう?」美香の声は柔らかく、断るのが難しい雰囲気だった。

天河は綿が電話をしているのを見て、「誰からだ?」と尋ねた。

綿は父親を見上げながら、「おばあちゃん、明日はちょっと予定があって難しそうです」と丁寧に断った。

電話の向こうで少しの間沈黙が続き、美香はため息をついて、「仕方ないわね」と言った。

綿は目を伏せ、小さな声で「おばあちゃん、本当に病院の仕事があるんです。もし早く終わったら、あとで顔を出しますね?」と言った。

「いいのよ、若いうちは忙しい方がいいから」そう言って、美香は電話を切った。

綿はしばらく電話を見つめ、深いため息をついた。

断ったことは仕方なかった。おばあちゃんも、綿がもう高杉家の一員ではないという現実を受け入れないといけなかった。

綿が食卓に戻ると、天揚が彼女に肉を切り分けて渡しながら、「また高杉家のおばあちゃんか?」と聞いた。

綿が頷くと、天揚はため息をついて、「高杉輝明のことはともかく、高杉家の人たちは本当に綿ちゃんを大切にしてくれてたんだな」と言った。

天河は鼻を鳴らし、「それも、それも、綿ちゃんがしっかりした態度を取っていたからだ。世の中、誰もただで他人に親切にはしないからな」と答えた。

綿は二人の会話を聞きながら食事を続け、心が少しずつ重くなっていくのを感じていた。

突然、天揚が酒杯を置いて、「そういえば、明日の午後、南城で茶話会があるらしい。たくさんの貴婦人たちが集まるんだって」と話し始めた。

綿は肉を噛みしめながら、天揚を見つめた

「俺も聞いたよ。かなりの規模だったし、主催者は赤十字会の坂本夫人だとか。坂本夫人の顔を立てないわけにはいかないだろうな」天河は酒を飲みながら重々しい声で言った。

綿は昨夜、美香に誘われたお茶会のことを思い出した。

もしかして、あれがこの茶話会のことだったのか?

高杉家のおばあちゃんは外聞を非常に気にする人だから、こんな大きな場に出席しないわけにはいかなかった。

そういえば、おばあちゃんは何でもよくできるけど、外聞を気にしすぎるところがあるのだ。少しでも外で恥をかくと、絶対に我慢できない人だった。

以前も、誰かが高杉家について
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status