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第0246話

輝明は眉をひそめ、森下に電話をかけ、耳に当てた。

車内に手を伸ばし、煙草を取り出そうとしたが、森下は電話に出なかった。

不機嫌そうに電話を切り、「?」とだけ短いメッセージを送った。

その時、煙草に火をつけた輝明は、病院から出てくる綿と数人の友人たちを見かけた。

綿が顔を上げると、ちょうど輝明と目が合った。

彼は煙草を一口吸ってから、すぐにそれを近くのゴミ箱に投げ捨てた。

服を軽く叩き、煙草の匂いを払うように見せかけた。

綿は彼の前に立ち、彼が車から水を取り出して一口飲むのを見た。そして彼は冷たく言った。「車に乗れ」

「何の話?ここで言えばいいでしょ。この後、おばあちゃんの様子を見に行くつもりだから」綿は車に乗るつもりはないと言わんばかりに答えた。

輝明は周りを見渡した。夕方のラッシュで人が多く、そして二人は今話題の中心にいた。ここで話すのは適切ではなかった。

輝明がためらっていると、綿は先に口を開いた。「離婚のこと、私が漏らしたんじゃないかって聞きたいんでしょう?」

輝明は沈黙した。

綿は、彼がまず自分を疑っていることを悟り、心の中で苛立ちが増した。

輝明がもう一度煙草を取り出そうとしたとき、綿はその手から一本の煙草を取った。

輝明はその動作を見て、綿が煙草を唇に持っていき、彼のライターで火をつけるのを見守った。彼女は冷静に言った。「離婚に同意したんだから、そんな卑怯なこと、まだ私を疑うんだね?」

輝明はその言葉を聞き流し、ただ綿が煙を一口吸って、眉をひそめてから吐き出し、「何が良いんだか、こんなもの」と言って、煙草を彼の手に押し戻すのを見ていた。

輝明は眉をひそめ、指に挟んだ煙草を見つめた。煙草の端には綿の口紅の痕が残っていた。

「私じゃない。信じるなら信じて、信じないならそれでいいわ」彼女は輝明の深い瞳を見つめ、静かに言い残して病院に戻っていった。

輝明は彼女の背中を見送り、その堂々とした姿に妙に圧倒された。

彼女は「私じゃない」と言った。

輝明は眉をひそめ、手に持った煙草を見つめ、少し考えた後、それを口にくわえ、車に乗り込んだ。

綿は病院の入口にたどり着くと、ふと振り返った。

輝明の心の中で、自分はこんなにも信用されていないのかと考えた。

綿が病室に入ると、美香の怒鳴り声が聞こえてきた。「ニュース一つ抑えられないな
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