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第0248話

「陸川、今日話したいのは高杉輝明のことじゃない」綿はカップをテーブルに置き、嬌をじっと見つめた。「話したいのは、おばあちゃんのことよ」

「おばあさんのことなんて、話す価値もないでしょ?」嬌は憎しみを浮かべた表情で言った。

綿は眉をひそめ、不機嫌そうに言った。「おばあちゃんはいつも体面を大事にしてる。高杉家が南城でどれだけの地位を持っているか、言うまでもないでしょ?こんなことを暴露したら、高杉家にどれだけの迷惑をかけるか、わかってるの?」

嬌はその言葉にまったく興味を示さなかった。輝明と結婚して高杉家の一員になるためなら、彼女は何でもするつもりだった。

「輝明と結婚して高杉家に入るつもりなら、おばあちゃんにもっと敬意を払ったほうがいいわ」綿は忠告するように言った。

嬌は冷笑し、過去に綿が高杉家のために尽くしてきたことを思い浮かべ、皮肉っぽく言った。「桜井、あたしがあんたみたいに輝明のために高杉家の犬になると思ってるの?」

綿「……」

家族のために真心を尽くしてきたことが、結局は犬扱いされるなんて。

綿が反論しようとしたその瞬間、カフェのドアが開いた。

「お客様、申し訳ありませんが、本日は貸し切りとなっております。どうかお引き取りを……」

綿と嬌が同時に振り向くと、白いシャツを着た輝明がこちらに向かって急いで歩いてきた。

嬌は一瞬ためらった後、「明くん」と呼びかけた。

輝明は綿をちらっと見て、嬌の腕をつかんで冷たく言った。「外で話そう」

「明くん、何があったの?」嬌は引っ張られながらも言った。「綿ちゃんもここにいるし……」

彼女が言い終わる前に、輝明は彼女を引きずるようにして店外に連れ出していった。

綿は二人の背中を見つめ、眉をひそめた。

輝明の様子からして、怒っているようだった。

綿はテーブルのコーヒーを一気に飲み干した。

嬌が奢ったものだから、無駄にはしない。

その瞬間、スマホがまた鳴った。

雅彦「あれは陸川嬌がやったことだ、わかった?」

綿はすぐに返信した。「わかった」

雅彦「わかったなら『了解』って返してくれよ。返事がなかったから、送信できてないのかと思ったよ」

綿はカフェのドアを押し開け、輝明の車が走り去るのを見送った。

彼がアクセルを踏み込む姿から、怒りを感じた。

もしかして、嬌がこの件をマスコミに漏らしたこ
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