第0250話

雨が窓を打つ音が、心をさらに重くさせていた。

「ちょっと外に出てくる」輝明は立ち上がり、ジャケットを手に取って外へ向かった。

「座ったばかりなのに、もう行くのか？」俊安は不満そうに言った。

病棟の入り口で、綿は激しい雨を見つめ、仕方なくため息をついた。急いでいたのに、結局土砂降りに遭ってしまった。

「最近、南城ってなんでこんなに雨が多いのかな？」

「雨だけならまだいいけど、雷まで鳴ると怖くてたまらないよね」隣にいた当直の看護師がぼやいた。

綿は空を見上げ、肩をさすった。

一瞬の閃光に、綿は反射的に目を閉じた。すぐに雷鳴が轟いた。

克服しようとしたが、綿は二歩後退り、身体が震えた。

息を呑んで目を開けると、彼女は頭を手で覆い、そのまま雨の中へと飛び出していった。

大雨はすぐに彼女を濡らし、風が耳元で轟音を立てていた。

雨粒が顔に当たり、その無力感と窒息感が、海に投げ込まれたあの瞬間へと引き戻した。

圧迫感、寒さ、そして息苦しさが甦ってきた。

足は徐々に止まり、彼女は手を胸に当てた。心臓が激しく鼓動し、まるで今にもショックになるほどだった。

耳元にはあの男の声が響いていた。「あいつを助けたいんだろう？なら、お前が先に死ね！」

「お前の命を使って、あいつの命を救え！」

あのナイフが肩に突き刺さる感覚、綿は一生忘れることができない痛みだった。

綿は元々痩せていて、呼吸も苦しく、このままでは雨の中で倒れそうだった。

大雨が無情にも降り続く中、急な足音が彼女に近づいてくるのが聞こえた。

そして、頭上に黒い傘が差し出され、耳元で男の声が響いた。「桜井、正気か？」

その声に反応して見上げると、そこには心配と怒りが入り混じった表情を浮かべた輝明がいた。

雨は激しく、彼の服もすぐにびしょ濡れになった。

輝明は綿の腕を掴み、車へと引き上げた。

綿はじっと彼を見つめていた。彼は毛布を取り出し、急いで彼女の髪や体を拭き始めた。

綿は彼を見上げた。まつ毛には水滴が付いていた。その瞬間、輝明がドキッとした。

二人は無言で見つめ合い、車内には静寂が広がっていた。

彼がしていることはすべて嬌のためで、自分のためではないと考えると、綿の胸は痛んだ。

輝明は唇を引き結び、彼女の髪を強く拭き、「自分で拭け」と命じた。

綿はうつむき、全身が濡れて車内を