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第0240話

場内はどよめきに包まれた。

美香は穏やかに微笑み、軽く頭を下げて挨拶を返した。

そのまま、美香は会場に入っていった。

その様子を、少し離れたところに停まっている黒い車の中から見つめる人物がいた。運転手は小声で、「お嬢様、中に入りました」と報告した。

美香が姿を現すと、すぐにその場の注目を集めた。

南城で最も影響力があるのは高杉家で、それは誰もが知っていることだった。

高杉家の当主が亡くなった後、美香は一人で高杉家を支え続けてきた。輝明と彼の父親も優れているが、高杉家の実権は依然として美香が握っていた。

「高杉さん!」誰かが近づいてきて、優雅に挨拶を交わした。

美香は軽く頷き、落ち着いた態度を見せた。

こうした華やかな社交の場で、彼女はいつも多くの人々から敬意を持って迎えられていた。

かつて、もう一人、同じように影響力を持つ友人がいた。南城で二人並んで有名だった。

それが……。

突然、「美香さん!」という声が聞こえ、美香の思考が現実に引き戻された。

顔を上げると、今回の主催者である坂本夫人が目に入った。

「待ってたわよ!」坂本夫人はとても親しげに、美香の手をしっかりと握った。

美香は70歳を過ぎていたが、見た目はとても若々しく、50代の人々と並んでも引けを取らなかった。

「遅れちゃった?」美香は微笑みながら尋ねた。

坂本夫人はすぐに首を振り、「いいえ、全然遅くないわ!」と答えた。

そのまま、坂本夫人は美香をメインの席に案内した。

美香が席に着くと、他の女性たちも次々と席に着いた。

今日の集まりは30名ほどだったが、どれも影響力のある人々ばかりだった。

「高杉のおばあさま、最近お元気ですか?」若い女性の一人が尋ねた。

美香は軽く頷き、「まあまあね」と答えた。

「おばあさま、もっと外に出て楽しんだらどうですか?」年配の女性が冗談交じりに言った。

美香は笑い声をあげ、お茶を一口飲んでから言った。「そうね、これからは皆さんとおしゃべりしたり、お茶を楽しんだりしようかしら。悪くないわ」

この言葉に、場内は再び笑いに包まれた。

すると、突然、ある女性が話題を変えた。「そういえば、輝明くんと奥様、最近どうなのかしら?昨日の記者会見を見たけど……」

昨日の記者会見で、輝明が嬌を同席させたことが、桜井家にとっては屈辱的な出来事として
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