共有

第0231話

心臓外科。

綿がオフィスのドアを開けると、ちょうど須田先生が話している声が聞こえてきた。「陸川家、今回本当に恥をかいたわね。あれだけ雪蓮草を贈るって言っておいて、結局は偽物だったんだから!」

別の医者も同意するように頷きながら、「まさに、自業自得ってやつだよね」と続けた。

「お疲れ様、桜井先生!」須田先生が手を振りながら近づいてきた。「体調は大丈夫?退院したんだね?」

綿は軽く頷いた。

須田先生はさらに近づいてきて、興味津々に尋ねた。「桜井先生、どうやって雪蓮草を手に入れたの?」

綿は一瞬答えに詰まった。どう説明したらいいのだろう?

M基地のM様だから、何でも手に入るって?

その時、別の医者が笑いながら須田先生を軽く叩いて、「忘れたの?桜井家は代々の医学一家でしょ。雪蓮草くらい持ってるに決まってるじゃない」と言った。

綿は少し考えてから頷いて、「うん、それは祖母のものよ。私にはそんな力はないわ」と答えた。

「そうだったんだ、さすが桜井教授ね!」須田先生も納得した様子で、「やっぱり、高杉社長のお祖母様の大事な誕生日だから、孫嫁としてそれに見合ったものを贈らないとね!」と付け加えた。

その瞬間、オフィスのドアが再び開いた。

須田先生は顔を上げて、「でも、誰かさんとは違って、愛人の分際で偽物を贈って高杉家のご機嫌を取ろうとするなんてね。今じゃネット中で偽物を贈ったことが広まってるんだから、まったく…」と皮肉たっぷりに言った。

その場に現れた嬌は、拳を強く握りしめ、綿を鋭く睨みつけた。

綿は黙ったまま、複雑な感情を押し殺しながら立ち尽くしていた。

嬌の取り巻きが彼女の怒りを察し、すぐに立ち上がって、「須田、朝からそんなこと言わないで!」と声を荒げた。

「あんたのご主人様が上手くいくとでも思ってるの?無理よ」須田先生は皮肉を込めて言い返した。

嬌はオフィスに入り、須田先生の肩を押しのけると、彼女の頬に平手打ちを喰らわせた。

「バシッ!」という音が響き、オフィス内は一瞬で騒然となった。

綿に直接手を出せなくても、須田先生に負けるわけにはいかなかった。

自分は陸川家のお嬢様で、ずっと大事にされてきたのに、須田先生なんかに何ができるっていうの?

「どうしたの?痛いところを突かれたの?」須田先生は挑発するように言った。

嬌はますます怒りを募
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status