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第11話 協力

苑里は顔を曇らせ、一歩一歩近づいてきた。

「鈴楠...... 」

鈴楠はその場に立ち尽くし、誰かが来るのを予感していた。苑里以外に、彼女を探しに来る者などいない。

彼女は静かに目を向けると、苑里の顔には柔らかく穏やかな表情が浮かび、哀れな様子を見せていた。

 彼女が目の前に立つと、苑里の笑みは冷たくなり、偽りの仮面がはがれた。

 「あなたはわざとこの宴会に来たの、慶一に近づくためでしょう? 離婚したんだから、しつこくまとわりつくのはやめたらどう、私だったら、遠くに隠れて絶対にこんな場所には来ないわ」

 鈴楠の目には、冷たく嘲笑を浮かべた表情が映っていた。

「苑里、あなたが愛人だったことはもう全世界が知っているのよ。最近は楽しく過ごせた?」

熱狂的なネット上の噂はすべて暴かれ、慶一のそばにいる苑里も同様だった。

慶一は関連する情報を取り下げたが、苑里という「愛人」は多くの非難を浴びることとなった。

そのせいで、苑里はしばらくの間、眠れない夜を過ごした。

「鈴楠、名分なんて重要じゃないわ。大切なのは感情よ。私は慶一と最後まで一緒にいられるけど、あなたはどうかしら?」苑里は悔しそうに鼻を鳴らし、頭から足まで鈴楠を見下ろすようにした。

「血を売ってやっとこの宴会の招待状を手に入れたんでしょう?そうでもなきゃ、こんな場所に来られるわけがないわよね。服もアクセサリーもレンタルでしょう?」

苑里は一歩一歩前に進んで、視線が微かに揺らめきながらプールの端に歩み寄り、冷笑を浮かべた。

「鈴楠、これはあなたが招いたことよ...... 」

 そう言って、突然後ろに倒れ込み、プールに落ちて水しぶきを上げ、その音が会場内の注目を一気に集めた。

 人々は驚きの声を上げた。

 鈴楠はその光景を無反応で見つめ、目に少しの沈みが現れた。彼女の頭には、三年前、慶一と結婚したあの宴会の光景が思い浮かんでいた。あの時と全く同じだった。

 「鈴楠、あなたの結婚を祝福はしないわ。だって、慶一が愛しているのはあなたじゃないもの。あなたがいつでも私に血を提供できるから、慶一はあなたと結婚することを承諾しただけよ。あなたたちは一緒にいても幸せにはなれないわ。信じないなら見てみて」

 彼女はプールの端から飛び込んでいった。慶一は考える間もなく、すぐに飛び込んでいった。

 苑里は実際にそれを証明して見せた。鈴楠はその時、自分の誠実さが慶一を動かすと信じていたが、結果は惨敗だった。

 そして今、苑里はまた飛び込んだ。水の中で彼女は必死にあがいていた。

 すぐに一人の男性が駆けつけてきた。言うまでもなく、それは慶一であり、彼は焦りながら水中の苑里を抱き上げた。

 「慶一、鈴楠を責めないで。謝りに来たけど、彼女は私を許してくれないの。彼女はまだ私を恨んでいて、故意にやったわけじゃないの」

 苑里は男の腕の中で縮こまり、泣きながら人々の同情を引きつけ、鈴楠に対して異様な視線を向けさせた。

 晋也は騒ぎを聞いて駆けつけたが、その光景を見て眉をひそめた。鈴楠は彼を止め、耳元で何かを囁くと、晋也は立ち去った。

 慶一は全身びしょ濡れの苑里を抱き、上着を彼女にかけ、冷ややかな目で鈴楠を見つめた。

 鈴楠はその視線を正面から受け止め、嘲笑を浮かべて答えた。

「この手はもう使い古されたわよ。あなたがまだ信じるとは思えないわ」

 信じるかどうかはどうでもいい。彼女は耳元の髪を直し、嘲笑を深めて続けた。

「どうでもいいわ。こんなに古臭い演技、少しも進歩がないなんて。私があなたの演技に付き合うわけない!」

彼女がその場を離れようとしたその時、苑里はこの絶好の弁解の機会を逃したくなかったのか、慶一の腕から飛び出し、鈴楠の腕を掴んで泣き出した。

「鈴楠、私が嫌いなのはわかってる。でもあなたが献血するたびに、慶一はちゃんとお金を払ってくれたじゃない。何が不満なの?離婚後にまで執拗に付きまとって、私たちを誹謗中傷して、何でまだあきらめないの?宴会に参加するためにこんなことまでして、本当に諦めないの?」

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