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第105話 交渉の余地なし

義雄は、最近の一連の出来事に対して文句を言いながら歩ていたが、何か物足りなさを感じていた。

二人が外に出ると、ちょうど晋也が堂々と歩いてくるのが目に入った。

「お前も来たのか?」

義雄は舌打ちをしながら言った。

「心配でさ。二人を迎えに来たんだ」

晋也は義雄から荷物を受け取り、鈴楠に目を向けた。

「もう準備した方がいいよ。記者がお前の動きを察知して、空港の外にはかなりの人数が集まってる」

鈴楠は鼻で笑いながら言った。

「こっちが負け犬になる必要はないわ!」

義雄は鈴楠の髪を撫で、満足そうに同意した。

「その通りだ。俺の後ろについてこい、誰が文句を言うか見てみよう!」

晋也は何かが起こるのではないかと心配し、鈴楠を守るように腰を引き寄せ、一緒に出口へ向かった。

外に出ると、無数のフラッシュが一斉に照らしだし、鈴楠は思わず顔を背けた。

その時の様子は、記者の目には、彼女が晋也に寄り添っているように映った。

数分前まで、「鈴楠と翔太が同居中?」という噂が飛び交っていたのに、すぐに「鈴楠と晋也の関係は家族公認?」という見出しに変わった。

「鈴楠さん、佐藤社長とは交際しているのですか?翔太さんとの関係は?」

晋也は彼女の目を覆い、フラッシュから守りながら肩を抱きしめ、力強く外に向かって歩き出した。

「鈴楠さん、佐藤家に嫁ぐおつもりですか?」

「二度目に豪族に嫁ぐ気持ちはどうですか?」

「こんなに多くの男性に囲まれて、優越感を感じますか?」

「鈴楠さん、足立さんもその一人ですか?」

無数の辛辣な質問が次々と飛び交い、根拠のない噂がすべて真実であるかのように扱われていた。

「佐藤会長、鈴楠さんの黒歴史についてどう思われますか?」

皆は当然、佐藤家の当主である義雄を見逃すことはなかった。

彼の態度が、鈴楠の運命を左右するかのような雰囲気が漂っていた。

義雄はその言葉を聞いて顔色が暗くなったが、ただ無言で前に進んで行った。

彼は何も意見を述べるつもりはなかった。

晋也も同様に、口を開くことはなかった。

ボディガードが記者を遮り、鈴楠は黒いドレスに高いヒールを履いて、落ち着いた足取りで堂々と歩き、何も言わなかった。

真実がすべてを証明してくれる。

ふいに、斜め前からペットボトルが飛んできて、鈴楠の後頭部に当たった。

彼女は驚
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