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第99話 三観なんてなかった

圭一が言ったあの一言、あれは誰だって怒る。苑里が鈴楠に蹴られたのも、ほとんどは圭一のせいだ。全然同情できない!

自業自得だ!

圭一は口元を引きつらせながら慶一に向かって言った。

「彼女、俺が三観を持ってないって言ってるのか?俺、何か間違ったこと言ったか?」

慶一は冷たい目で圭一を一瞥し、低い声で答えた。「お前はどう思う?」

仕方ない。確かにちょっと言いすぎたかもしれない。でも、苑里のことを心配して焦ってただけだ。彼女は程恒が唯一気にかけている人なんだから。

まさか、あんなに大げさに見えた怪我がただの擦り傷だったとは。

「でも、あいつも手を出すなんて......」

どんだけ怒ってたんだ。

面倒くさい。もしあの女が怒りで裸の写真をばらまいたら、俺はどうなる?

慶一は眉間にシワを寄せながら、「苑里を病院に連れて行け。俺はもう行かないと」

「は?ちょっと待ってくれよ、俺も行かなきゃいけないんだ!」

彼は鈴楠が裸の写真のことを思い出す前に謝りに行かないと!男としては、頭を下げることも大事だろ?

慶一は圭一の話に耳を貸さず、スマホを手にして立ち去った。圭一も慌てて彼を追いかけた。

瑛美はその場に取り残され、ぽつりと呟いた。「......え?私だけ?」

それで、この後始末は彼女がするってこと?

一方、翔太の車内では、鈴楠がスマホを見つめていた。グループチャットが大騒ぎになっていた。みんなが今回のショーに意志が参加できなかったことを残念がっている。

彼は父親に無理やり海外出張に連れて行かれており、戻ってくるのは半月後のことだ。

途中で帰宅した美優は、鈴楠と舞台に立った時の写真を数枚アップし、意志が鈴楠を大絶賛していた。それに怒った美優が彼と口論を始めている。

鈴楠は思わず笑みを浮かべた。こういう楽しいことこそ、意義がある。

その時、智子からメッセージが届いた。「もう家に着いた?」

「今帰る途中。あの女死んだ?」

「絆創膏貼って終わり。これから赤信号無視して戻ってきた医者の違反を処理しなきゃ。じゃあね!」

「......」

鈴楠は思わず声を出して笑ってしまった。翔太が横目で彼女を見て、興味津々に言った。「何があったんだ?俺も笑わせてくれよ」

鈴楠は彼に向き直って言った。「忘れないで、智子にヨットを買ってあげるんだよ!」

翔太はため息
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