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第13話 送り出す

「慶一、これが三年間、献血にあなたから受け取った報酬です。今、返します。これで私たちはお互いに借りがなくなったわ......」

鈴楠の声は冷たく、決然としていた。

慶一の瞳は深く、その時の気持ちは非常に複雑だった。

周りの人々もその心情を読み取った。苑里がさっきまで鈴楠に「お金のために付きまとっている」というレッテルを貼っていたが、鈴楠は瞬く間にそれを打ち消し、苑里は完全に面目を失った。

鈴楠は輝く光の中を去って行き、苑里は唇を噛み締め、全身を震わせた。

この女、まさに彼女の宿敵だ!

「慶一、鈴楠はきっとまだ私に怒っているわ。私たち、もう帰りましょう」

慶一はこの機会を逃したくなかった。「君は入口で待っていてくれ」

そう言うと、彼は真っ直ぐ中へと入って行った。鈴楠がソファに座っているのを見つけると、有名な佐藤晋也がその側に跪いて、優しい眼差しで彼女のハイヒールに擦れた足首を揉んでいた。慶一の視線は鋭く刺さった。

二人は顔を上げ、予期せぬ訪問者を見た。佐藤晋也は微笑んで落ち着いた様子で鈴楠の隣に座り、彼女を自分の腕の中に引き寄せた。

「藤原さん、大切な人を慰めに行かずに、またこちらに仕返ししにでも来たものか?」

慶一は眉をひそめ、全身に冷気を漂わせ、彼が彼女を抱きしめる手をじっと見つめ、その声には冷たさが増していた。

「鈴楠、もし君に不愉快な思いをさせたなら、私に直接言えばいい。でも、婉柔に謝るべきだ」

鈴楠は唇を軽く上げて笑い、彼の視線を受け止めた。「もし私が謝らないとしたら?私を水に投げ込むつもり?」

慶一は彼女の軽率な態度に不満を感じ、彼女が他の男とすぐに親しげな様子を見せることに、なぜか怒りを覚えた。

「夫婦だったことを思い出して、少しは優しくしてくれ」

「藤原さん、私を誤解してるわ。私は生まれつき悪人なの」

慶一は言葉に詰まり、鈴楠の徹底的な拒絶に怒りを感じたが、彼らはすでに離婚しており、彼女を叱る立場にはなかった。

彼は冷たい声で「好きにしろ」と言い残して立ち去った。

彼は鈴楠に苑里との関係を説明しようとしていたことさえ忘れてしまったが、今となってはそれも無意味だった。

鈴楠の笑顔は徐々に消え、佐藤晋也は彼女の肩を軽く叩いて、「楠ちゃん、まだ彼のことが好きか?」

「まさか」

鈴楠は冷笑した。二度と同じ過ちを犯すつもりはなかった。

......

慶一の車の中で。

苑里は彼の上着を身にまとい、今夜の出来事を説明し、慶一の疑念を払おうとしたが、運転手が驚いて「おや、あれは橋本さんではないですか?」と声を上げた。

運転手がゆっくりと車を止め、後ろにあるヒルトンホテルの巨大なスクリーンを指さした。

数10億円もかかる1分間の広告スペースに映し出されたのは、先ほどの苑里と鈴楠がプールサイドで繰り広げた一幕だった。

ただし、二人の顔にはモザイクがかけられていたが、パーティーに参加した名士たちはその正体を知っていた。

慶一はその映像をじっと見つめ、画面は無音だったが、鈴楠が苑里に触れていないことは明白だった。苑里は自ら一歩後退し、頭を仰け反らせてプールに飛び込んでいた。

一瞬で、車内の空気が重苦しくなってきた。

慶一の顔はさらに冷たくなり、その瞳には冷徹さが宿っていた。数分前、彼は鈴楠を探しに行き、謝罪を要求したばかりだったのに?

これが鈴楠の彼らへの返答だったのだ。

馬鹿げている、本当に馬鹿げている!

苑里の顔は真っ青になり、彼女は恐怖に震えた。

まさか監視カメラの映像が、全市が目にする広告スペースに流れるとは、彼女は想像もしなかった!

「バン!」車のドアが激しく閉められた。

慶一は車の外に立ち、その声は冷たく、目には抑えられた怒りが宿っていた。

「明日の朝一番で、君をF国に送ってもらう!」

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