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第21話 両手に花

会議はひっそりと静まり返って、突然の沈黙が訪れた。

林美奈子は顔色が悪く、気まずそうで立つ瀬がなかった。彼女はこの会社で何年も働き、やっと手に入れたポジションを手放したくなかった。

しかし、入社したばかりの鈴楠のために、晋也は何気なく彼女の顔に泥を塗るようなことをしたというのか?

会議室内は静まり返り、誰もが互いに顔を見合わせた。

鈴楠は少し眉をひそめ、初日から敵意を招くことは望んでおらず、美奈子に助け船を与えようと口を開きかけた。その時、美奈子は不安そうに立ち上がり、顔を赤らめて言った。

「佐藤社長、申し訳ございません。会社の決定を尊重し、佐藤さんの仕事をしっかりとサポートさせていただきます」

「それならいい。解散」

晋也はそれ以上何も言わず、一瞬の無駄もなく堂々と会議室を後にした。

美奈子は長い溜息をついた。

会社の皆は鈴楠の入社に対して不満を抱いていたが、晋也の威圧感に圧倒され、誰も反対できなかった。しかし、鈴楠は気にしなかった。彼女は自分の能力で証明してみせるつもりだった。

和也は鈴楠のオフィスに入り、丁寧に言った。「佐藤さん、何かございましたらお申し付けください」

鈴楠は和也が晋也の腹心であることを知っており、彼に助けてもらうのは大いにありがたいと感じた。「ありがとうございます。佐藤社長から巨立グループのプロジェクトについて聞いたので、その全ての資料をお願いしたいです」

和也はうなずき、「かしこまりました。すぐにご用意します」と答えた。

和也がオフィスを出ると、美優が入ってきて、携帯のストラップを振り回しながら言った。「鈴楠ちゃん、私のオフィスは君の隣だよ。これからは一緒に頑張ろうね」

鈴楠は笑顔を浮かべ、非常に嬉しかった。再び、彼女たちは昔のように一緒に仕事ができるようになったのだ。

「最初は大変かもしれないけど、そのうち慣れるよ」

美優は冷笑し、髪をかきあげながら言った。「恐れることがないでしょう。それより、見せたいものがあるんだ」

彼女は笑いながら、携帯を鈴楠に手渡した。鈴楠は不思議に思いながらそれを受け取り、画面を見た瞬間、開いた口が塞がらない。

ネット上で新たな波紋が広がっていた。美優はなんと数多くの有名インフルエンサーに頼んで、昨夜の映像の完全版を一斉にリツイートさせた。映像には、美優がチンピラに絡まれ、鈴楠
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