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第41話

さらに泣き出した橋本美咲を見て、氷川颯真はますます途方に暮れた。

しかし、橋本美咲はしばらく泣いた後、自分で気持ちを落ち着かせた。彼女は顔の涙を拭き、何をすべきかわからない様子の氷川颯真を見て、くすっと笑った。

「ありがとう、気分がだいぶ良くなったわ」

氷川颯真はようやく安堵した。

彼は数枚のティッシュを取り出して、橋本美咲に差し出した。

橋本美咲はそれを受け取り、少し黙り込んだ後、蚊の鳴くような小さな声で言った。「喧嘩って本当に嫌ね」

氷川颯真は少し不思議に思った。「喧嘩?前にも母親と喧嘩したよね?そん時はこんなに辛そうじゃなかったわ」

橋本美咲はこの話を続けたくないようだった。

彼女が話したくないのなら、氷川颯真もそれ以上問い詰めなかった。橋本美咲の頭を軽く叩いて言った。「嫌なことは寝て忘れよう。起きたらすっきりしてるはずだよ」

橋本美咲は仕方なく頷いて、少しためらった後に言った。「颯真のところで寝てもいい?一人じゃ寝られないの」

氷川颯真は笑った。僕の妻なんだから、もちろんここで寝てもいいわ。

「眠れないなら、これからは一緒に寝よう」

氷川颯真は考えた後、心の中の思いを橋本美咲に伝えた。

橋本美咲はそれを受け入れ、氷川颯真のベッドに横たわり、安心して目を閉じた。

氷川颯真は橋本美咲の掛け布団がちゃんと掛かっていないのを見て、直してやった。自分もベッドに上がり、布団の半分を引き寄せてかけた。そして、部屋の大きな明かりを消し、ベッドサイドの暖かい黄色のランプだけを残した。さらに、金縁の眼鏡をかけ、本を取り出して読み始めた。

橋本美咲はベッドの上で寝返りを打って、氷川颯真を見つめて言った。「寝ないの?」

氷川颯真は首を横に振った。「美咲が寝たら、僕も寝るよ」

橋本美咲は目を閉じたが、10分も経たないうちに、また目を開けて言った。「眠れない!」

氷川颯真は本を閉じ、仕方なそうに橋本美咲を見た。「目を閉じてまだ10分も経ってないんだから、そりゃあ眠れないさ」

「でも眠れないんだもん」橋本美咲は不満そうに口を尖らせた。「本を読んで聞かせてくれる?」

橋本美咲は目を輝かせて提案した。氷川颯真はいつも自分の妻には弱かった。

「わかった、わかった」颯真は優しく橋本美咲を見つめた。「本を読んであげるから、おとなしく目を閉じて」

すると、
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