共有

私は結婚式の日に死にました
私は結婚式の日に死にました
著者: 果々

第1話

「川崎いずみはどこだ?まさかそこで動けなくなって死んだんじゃないか?」

意識が次第に戻ってくると、耳に入ってきたのは桜井涼の怒りに満ちた罵声だった。

「桜井社長、探しに行きましたが、どこにも彼女の姿が見当たりません。川崎さんに何かあったのではないでしょうか?」

桜井社長の秘書は、少し躊躇しながら口を開いた。

それを聞いた桜井社長は、テーブルの上のグラスを激しく床に叩きつけて割った

「彼女に何が起こるって言うんだ?これはわざと私を困らせるためだ!美咲のためにちょっと懲らしめただけじゃないか!」

彼の胸は怒りに激しく上下していた。

その時、ドアのそばから柔らかい声がゆっくりと近づいてきた。

「涼お兄ちゃん、さっきいずみお姉さんを見たかもしれないの!写真も撮ったよ!」

橘美咲はまるで宝物を見せるかのようにスマートフォンを取り出し、桜井涼の目の前に差し出した。

写真には、私と幼なじみの高木尋の姿がはっきりと写っていた。

桜井涼は写真をじっと見つめ、歯を食いしばりながら言った。

「川崎いずみ、彼女が私を裏切るとは!結婚式をすっぽかして、他の男と遊んでいたなんて!彼女は元気そうだな!」

彼が私を殺したいほど憎んでいる様子を見ても、私の心はすでに麻痺していた。

彼はいつもこうだ。

橘美咲の言うことは何でも信じるのに、私のことだけは信じない。

彼は今、私が死ぬことを強く望んでいるに違いないが、実際には彼の願いはすでに叶っている。

暗く狭い地下室で、私は柱に縛り付けられていた。

閉所恐怖症の私は震えが止まらず、助けを求めた。

「桜井涼、お願い!私が間違っていたわ!橘美咲を傷つけるべきじゃなかった!全部私のせいよ!」

しかし、彼は冷たい目で私を見ながら皮肉を言った。

「川崎いずみ、お前は橘美咲を殺しかけたくせに、今さら哀れなふりをするのか?」

恐怖のあまり、私は一言もまともに話せなかった。

「ち、違う!わ、わたしは……そんなつもりじゃ!」

彼は苛立ったように、私の口にきつくテープを巻き付けた。

その後、私の懇願するような目を無視して、ナイフで私の腕に三度も深く切りつけた。

「お前が橘美咲の腕を骨折させたんだから、三度切りつけてやる。殺しはしないが、これでお前の悪事の代償を払わせる!」

これが彼の最後の言葉だった。そして、地下室の唯一の扉を乱暴に閉めた。

彼が私に対していつも冷淡であることは知っていまたが、彼がここまで無情になれるとは思わなかった。

腕には鋭い痛みが走った。

血が傷口からゆっくりと滲み出し、地面にぽたぽたと落ちるのを感じた。

しかし、桜井涼は間違っていた。

私は生まれつき血液凝固障害を患っていた。

この三度の切り傷で命を落とすには十分だった。

暗闇に包まれた地下室には一筋の光もなく、無限の闇が私を飲み込んでいった。

心も無数の鋭い刃で裂かれたようで、呼吸するたびに骨身に染みる痛みが伴う。

「うーん……うーん……」

地下室には、私の苦痛と絶望に満ちた呻き声がこだましていた。

どれくらいの時間が経ったのかわからないが、ついに私は解放されたかのように目を閉じた。

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status