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第5話

彼は私の手を掴んでゆっくりと締め付けたが、突然それを放した。

私は力が抜けて地面に座り込み、大きく息を吸った。

「涼、私は本当にそんなことしていないの!私じゃないんだ!」

私は慎重に彼の服の裾を掴んだが、彼はそれを乱暴に振り払った。

「川崎いずみ、俺はお前と結婚するけど、それ以上のことは望むな!」

そう言い捨てて、彼はドアを強く閉めて去っていった。私は冷たい床の上に座り、一晩中そのままで過ごした。

そしてその日はちょうど私の誕生日でした。

私はご飯を作り、ろうそくを灯し、ケーキも買っていた。

桜井涼が家に帰ってきたら、一緒に温かい誕生日を過ごせることを心から期待していた。

しかし、彼の言葉は私のすべての期待を粉々に打ち砕き、ただの独りよがりにしてしまった。

私たちは十分に愛し合っていると思っていた。

しかし橘美咲の前では私たちの信頼はあまりにも脆かった。

でも今思えば、それほど辛くはなかったような気がする。

少しだけ胸が締めつけられるような感覚はあるが、これが良い兆しであると感じる。

「桜井社長、こちらは川崎さんの遺体です!彼女は本当に亡くなっています!」

「そんなはずがない!お前も彼女に買収されたんだろう?彼女と一緒にここで私を騙そうとしているのか?」

私は彼が私の死体を見たときにどんな反応をするか期待していたことがあった。

彼が苦しむのか、それとも全く気にしないのか。

でも、まさか彼は私の死体を見ても、これが私の仕組んだ芝居だと思い込んでいるなんて想像もしていなかった。

「涼お兄ちゃん、ちょっと怖いから、やっぱり外に出ようよ!」

橘美咲はまたあの無垢で可哀想な顔をして、桜井涼の手を引いて外へ出て行った。

彼らは階段を上がり、ソファに腰を下ろした。

橘美咲は彼にもたれかかり、柔らかい声で言った。

「涼お兄ちゃん、もう怒らないで!怒ると体に悪いよ!」

そう言いながら、彼女は桜井涼の口元に少し近づき、続けようとしているようだった。

もう少しでキスをしそうになった瞬間、桜井涼は彼女を強く突き放した。

彼はイライラしながらネクタイを引っ張り、彼女に一言投げかけた。

「美咲、先に帰ってくれ。まだやらなきゃいけないことがあるんだ」

そう言い残し、彼女を一瞥もせずに携帯を手に取り、そのまま外へ出て行った。

残された橘美咲
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