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第22話

心の声が聞こえたようだった。

兄は突然顔を上げ、空っぽの部屋を見つめた。そこは私が生前住んでいた場所だった。

誰も住んでいないように、綺麗だった。

そう、桜子にはあるものが、私は持っていなかった。

「静香、まだここにいるのか?

あなたがまだここにいると思っていた」

兄は呆然として、その部屋に座っていた。

松沢幸子が一方から現れ、ため息をついた。

「悠介、体を大事にしなさい。

静香はあなたのことを心配している。

以前、あなたが酔っ払った時、その酔い覚めの湯や粥は静香が用意したものよ。

あなたの机の上にある目に優しいものも。

あなたのシャツや服も、静香がアイロンをかけてあげたの」

悠介は突然、ずっと前に酔っ払って帰った時を思い出した。家に入ると、妹が隣の部屋から頭を出し、怯えた表情でこちらを見ていた。彼女はその時、まだ中学1年生だった。悠介は会社のことで忙しかった。

その時、彼は何をしたのだろうか?

必死に考えた。

「もしあなたのせいじゃなかったら。

こんなに疲れることはなかった。

静香、嫌いだ」

妹の澄んだ目に涙が浮かんでいったのを見て、彼は快感を覚え、次第に罪悪感が押し寄せた。

妹はゆっくりと頭を引っ込めた。

彼は自分の部屋に戻り、机の上に置かれた酔い覚めの湯を見た。

少し温かかった。

その時、桜子が跳ねながら近づき、彼の首を抱きしめた。「兄ちゃん、帰ってきたの?疲れてる?」

「うん、兄ちゃんは疲れたよ。桜子、酔い覚めの湯を準備してくれてありがとう」

悠介はもう耐えられなかった。

巨大な痛みが襲い、心臓を強く押さえた。

静香にもう一度会える方法はあるなら、どんな代償を払ってもいい。

ひらめいたのは死だった。

彼は大量の睡眠薬を飲み込んだ。

そして、空中に漂っていた私を見た。
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