第12話

紗花は激怒し、母の髪をつかんで頬を一発叩いた。「育てた恩？彼女はとっくに返したじゃない！」

「桜子から聞いたけど、お前らは彼女を佐々木慶一に渡したんでしょ？それでお互いに終わりよね」

「今になって育てた恩を持ち出して彼女を脅すなんて、何を装ってるの？」

母は殴られて少し呆然とし、しばらく震えながら口を開いた。「美紀......」

しかし紗花は彼女が言い終わる前に、また一発叩いた。「もう一度桜子に関わるようなら、絶対に許さないから！」

何度も叩かれて、母の顔は真っ赤になり、紫色に腫れ上がって、まったく言葉を発することができなかった。

それから彼女はその人を外に投げ出し、さらに看板に一言添えた。「渉真と葉山家の三匹の犬、立ち入り禁止！」

私は思わず咳き込みながら笑った。彼女は優しく私の背中を撫で、「桜子、あなたが本当に私の桜子だなんて」と感慨深げに言った。

私が三歳の時、孤児院にいたころ、ずっと面倒を見てくれたお姉さんがいた。

そのお姉さんが紗花だった。

彼ずっと「桜子」と呼ばれる妹のことを覚えていて、何年も気にかけていた。

それで、刑務所で私の名前を聞いたとき、彼女は心が柔らかくなったのだ。

彼女は私を守り、美紀に取り入っている人を叩きのめして、誰も私をいじめないようにした。

私はベッドに横たわり、紗花がタバコをくわえながら、私をなだめていた。

彼女は私のすべての傷を癒してくれるようだった。

突然、気分が悪くなった。

「紗花......」と呼ぶと、彼女はすぐに反応し、私の体調に何か問題があるかと心配そうに聞いてきた。

私は首を振りながら、「子供のころ、南城に行ってみたいと思っていたけど、行けなかった。代わりに行ってみてくれない？」と頼んだ。

彼女はタバコを噛み切り、煙を吐き出した。

「何を言ってるの！お前が良くなったら、連れて行くから！」と言いながら、目に涙を浮かべた。

私がもうダメだということは分かっている。実際、彼女もそれを知っている。

私は今、重度のうつ病だけでなく、末期の胃癌も抱えている。彼女と渉真はそれを知っていて、私には隠していた。

でも自分の体のことは、一番わかっていた。

吐血、嘔吐、そして痛みが私の体を蝕んでいた。

もう耐えられなくなっていた。

紗花は顔を覆い、声を詰まらせて言った。「私は長い間社会で生