共有

第2話

まだ死ねない、まだ希望はあるって、自分に何度も言い聞かせた。

力を振り絞り、目の前に立っている美紀を見た。

彼女は白いチュニックを着て、首を傾げながら言った。「おや、桜子出所したの?」

美紀は清純な顔立ちで、顔に傷がなければ無垢なジャスミンの花のようだった。

彼女の黒い目が私を見るたび、恨みが見え隠れしていた。

美紀は両親に、なぜ私を追い出さないのかと尋ねた。

母は優しく彼女の頭を撫で、「渉真が連れて戻ってきたのよ。今追い出したら、噂になっちゃうかもしれないから」と答えた。

「いい子だから、もう少し我慢してね」と言い終わると、私の足元に置いた袋をちらっと見て、顎を上げて言った。「ここにいるなら、出しゃばらないでよね!」

それは階段下に作られた物置部屋だった。

以前は家のメイドが使わない物を置いていた部屋だ。

ドアを開けると、埃が舞い上がって咳き込んでしまった。

中には寝る場所などなかった。

私はドアに背を寄せ、ゆっくりと地面に滑り込み、頭を膝に埋めた。

お腹がすいていて、体も痛かった。

しかし、監獄で過ごしたこんな長い時間、どんな環境でも生きてこられた。

眠気に襲われ、体を丸めてそのまま眠りに落ちた。

翌朝、目を覚ますと目の前は真っ暗だった。

この狭い部屋は電気のスイッチが外にあった。

外から美紀の声が聞こえて、ドアを叩けなかった。

私のことを思い出されたら、美紀に怒られるのが怖かった。

しばらくすると、両親の声が聞こえてきた。

「美紀、あまり服を持っていかなくても、現地で買えばいいよ」母が優しく言った。

「急いで、運転手がもう着いたよ。早く行こう、遅れると変更が必要になるから!」父がスーツケースを押しながら、ゴロゴロと音を立てていた。

その瞬間、彼らが旅行に出かけることに気づいた。

急いで木のドアを叩き、大声で叫んだ。「父さん!母さん!開けてよ!」

このドアの鍵も外にあった。

彼らが旅行に行くなら、一週間も帰らないだろう。ここで死んでも、誰も気づかないんじゃないかって思った。

でも、ただドアが閉まる音がしただけ。

誰も私に応えてくれなかった。

暗闇は恐怖を無限に増幅させた。

溺れているみたいに感じた。

「父さん!母さん!」と無我夢中で叫んだ。

さらには美紀の名前も叫んだ。

声が枯れて、もう声を出せなくなっても、誰も助けに来てくれなかった。

もう運命を受け入れようかと思った。

結局、私の人生は台無しになったし、誰も私を嫌っているのだ。

「生きている意味があるのか?」と考えた。

ボロボロの袋を胸に抱きしめると、中のノートが胸に当たって痛んだ。

ノートに書かれた言葉をつぶやいた。

それは、監獄の中で生きていけなくなった時、仲間が私に言った言葉だった——「生きろ!葉山桜子は生き続けたい!」

本当に生きたいのかはわからなかったが、それでも立ち上がる努力をした。

少なくとも、この陰暗な隅で死にたくはなかったし、臭くなりたくもなかった。

ドアの隙間から入ってきた光を頼りに、周りを探った。

ようやくハンマーを見つけ、ドアの鍵に叩きつけた。

一発、二発......幸い、この部屋の鍵はそんなに丈夫ではなかった。

ドアが開いた瞬間、眩しい光が目に刺さった。

目を瞬かせながら、袋を拾おうとした時、隅にあるぼろい人形を見た。

それはピンク色のぬいぐるみで、丸い体が今では汚れてしまっていた。私のようだ。

心が痛んだ。

震えた手で人形を拾い、バッグに入れた。

そっとドアを閉め、声に出さずに「さようなら」と呟いた。

この家は私が10歳の時に両親が買った3階建て、ここで14年も過ごした。

庭には本来、私が育てたバラがあり、木には父に頼んで作ってもらったブランコがあった。

2階には私の寝室もあった。豪華ではなかったが、思い出がたくさん詰まっていた。

しかし、今の庭にはジャスミンしか生えておらず、バラの影も見えなかった。

木は切り落とされ、今は根元だけ残っている。

すべてがなくなってしまった。

突然、この場所がとても見知らぬものに感じた。

振り返ることなく、その場を離れた。

別荘街は郊外にあり、長い道のりを歩いた。

道すがら、渉真の家を通り過ぎた。

彼とは中学の同級生だった。初めて彼を見た時、私は思春期の真っ最中で、ひそかに友達に彼を好きだと打ち明けた。

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status