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第9話

せっかく渉真を好きになったのに、彼と婚約したのは私だった。それに対して美紀が納得できないのも無理はない。

これが、彼女が私を陥れた理由なの?

彼女の顔を見つめた。何事も気にしていないかのようなその表情は、悪魔そのものだった。

病室には私一人だった。

これで私にはチャンスができた

窓の外を確認すると、ここは3階。そんなに高くはない。

窓を開けて外に身を乗り出した。

「桜子!」渉真が病室に駆け込んできたのは、ちょうどその瞬間だった。

私は彼に微笑み、身を翻して飛び降りようとした。

だが、彼は素早く飛びつき、私の手を掴んで引き止めた。顔は真っ赤だった。「桜子!お前、正気か?」

「放してよ、渉真」私は目を閉じて風を感じた。

彼は知らないんだ。私の鬱病がどれだけ深刻なのか。

死ぬこと、それが私にとっての解放なのに。

彼は片手で私を掴み、もう片方の手で窓枠を必死に握りしめていた。その手はすでに窓の金具で傷ついて、血が滲んでいた。

消防隊員が下にマットを敷くまで、彼は手を離そうとしなかった。

やっとのことで力尽きた彼は、仕方なく手を離した。

死ぬ確率が下がったことに、私は腹立たしかった。「渉真、あんたって本当に嫌なやつだ」

あんたは私に死ねって言ったのに、どうして今さら止めるの?

次に目を覚ました時も、まだ病室だった。ただし、今度は完全に封鎖された部屋だった。

渉真は髭が伸び放題で、私が目を覚ますと怒りの表情で聞いてきた。

「そんなに死にたいのか」

「そうだよ」

そう言うと、彼はしばらくの間、黙り込んだ。

そして、混乱した表情でつぶやいた。「どうして.....まだ若いのに、お前は.....」

若い。確かに、私はまだ若い。

でも、毎日生きていること自体が苦痛なんだ。

私は日に日に気力を失い、力が抜け、食欲もない。

痩せていく私を見て、渉真は手の打ちようがなかった。

彼は鼻からチューブを入れて私に栄養を摂らせようとした。

医者は彼に言った。

「患者さんは生きる意思がない。このままでは長くは持たないでしょう」

渉真はぼそりとつぶやいた。「そんなはずはない。彼女は今までずっと大雑把な性格だったんだ。どうして急に.....」

医者はただため息をつくだけだった。

そして、私が吐血するようになった。

渉真は、私の口元から血が滲
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