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第11話

私が彼が手を貸してくれないと思っていたその瞬間、彼は突然私の腰を抱き寄せ、笑みを浮かべながら私を見つめた。

「この間の夜は少し乱暴だったかもしれないけど、体はもう大丈夫?」

彼の顔には曖昧な笑みが浮かび、声は甘く、とろけるようだった。

否定できないのは、こんなにハンサムな男が優しい表情で私を見つめる瞬間、私は少しだけ心を奪われた。

しかし、彼が何を言っているのか理解した瞬間、顔が一気に真っ赤になった。

この男、いきなりそんなことを言うなんて、本当にストレートすぎる。

「その……だいぶ良くなったわ」

私は困惑した笑みを浮かべた。彼の目はあまりにも深く、直視するのが少し怖かった。

「次は気をつけるよ、もう痛くさせないから」

彼は手を伸ばして私の髪を耳にかけ、優しい目で私を見つめた。

なぜか分からないが、彼の触れる手に心が乱れ、顔がさらに赤くなってしまった。

それに、彼はさっきなんて言った?次?次なんてもうないわよ!私の初めてを奪っておいて、まだ次があると思ってるの?

心の中で墨田英昭の祖先八代まで罵っていたが、佐藤良一と秦野夢美がいる前では、幸せそうな顔をしてみせるしかなかった。

遠くから佐藤良一の顔色が変わったのがはっきりと見えた。彼が私を見る目には怒りが込められているようだった。

秦野夢美も私が墨田英昭に寄り添っているのを見て、信じられないような表情をしていた。その目は疑念に満ちていた。

「山本美香、あなたが言ってた男って、彼のこと?」

墨田英昭は財力にせよ容姿にせよ、佐藤良一とは比べ物にならないほど優れている。秦野夢美は墨田英昭の正体を知らないが、その雰囲気だけで佐藤良一とは次元が違うと感じていた。

「どう?佐藤良一を誘惑したことを後悔してるんじゃない?」

私は嘲笑を浮かべ、冷たく秦野夢美を見つめた。

「墨田社長」

佐藤良一の表情が変わり、墨田英昭に対して恭しく挨拶をした。

「佐藤マネージャー、今日は何があったのか?随分と騒がしいようだが」

墨田英昭は佐藤良一を一瞥し、冷淡に尋ねた。

佐藤良一は私を少し見てから、墨田英昭の問いかけに答えあぐねているようで、顔に困惑の色が浮かんでいた。

今、墨田英昭に抱かれている私の気持ちは痛快そのものだった。佐藤良一がどう思っているのかは分からないけど。

「い、いや、ただの個人的な
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