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第19話

「えっと、清水菫はあんなに美人なのに、本当に彼女と別れてしまうなんて、後悔しないの?別に、もし心残りがあるなら、許してあげてもいいんじゃない?」

世間では「仲直りを勧めるけど、別れを勧めるのはよくない」と言うけど、私だって自分の男が浮気したら絶対に許さない。でも、もしここで「墨田英昭が正しい」と言ったら、彼に何か裏があるんじゃないかって思われるかもしれない。

だから、ここは無難に「仲直りを勧める」ことにした。

「俺が浮気した女を許すと思うか?」

どうやら私の言葉が気に入らなかったらしく、墨田英昭の顔は険しくなり、その目には怒りの色が浮かんでいた。

私はぎこちなく笑いながら、どう返答すればいいのか分からなかった。心の中では「彼女と別れるのはあなただし、私に何を言わせたいわけ?偶然聞いただけなんだから、そんなに責めなくてもいいじゃない!」と腹を立てていた。

「それに、俺と清水菫はお前が考えているような関係じゃない。お互いに求めていたものがあっただけだ。彼女が欲しかったのは名声と金、俺が欲しかったのは単に生理的な欲求を満たすことだ」

墨田英昭は淡々とした口調で私を一瞥し、その声には何の感情も込められていなかった。

「生理的な欲求を満たすだけ……」

この男、本当に率直で露骨な言い方をするんだな。

「その、あなたと清水菫の関係なんて、私に説明する必要ないわ。私は秘密は守るから、誰にも言わないわよ」

私には、どうして墨田英昭がこんなに詳しく説明してくれるのか理解できなかった。私たちはこれが3回目の会話に過ぎず、結局のところ、一夜の関係を持っただけの他人同士なのに。

私の言葉に、墨田英昭は眉をひそめ、少し不機嫌そうだった。私はまた何かまずいことを言ったのかと思ったが、直感的にこの男が非常に危険な人物であることを感じ取り、黙っていた。

気まずい沈黙が続く。墨田英昭がそばにいると、私は体全体が落ち着かない。

「こんな夜遅くに、一人で何をしてるんだ?」

しばらく沈黙が続いた後、墨田英昭が再び口を開いた。

「別に。ただ気分が悪かったから、冷たい風に当たりながら、酒を飲んで気を紛らわせていただけ」

午後に佐藤良一に付きまとわれたことを思い出し、すでに良くなっていた気分が再びイライラし始めた。

「行こう、送ってやるよ」

墨田英昭は冷淡に私を見つめ、手を差
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