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第18話

墨田英昭は、完全に清水菫を切り捨てるつもりのようだった。まあ、そうだろう。彼のようにお金も権力も持っている男が、女に浮気されるなんて耐えられるわけがない。

今では、彼が清水菫に対してあれほど冷酷なのも理解できる。私も同じだ。私の目には裏切りは許されない。佐藤良一が私を裏切った時、たとえ心がどれほど痛んでも、彼との関係を終わらせるしかなかった。それが男で、しかも、墨田英昭のような男ならなおのこと。

「英昭、本当に私を許してくれないの?」

清水菫の涙が次々と頬を伝い落ち、その哀れな姿は確かに心を揺さぶるものがあった。しかし、二人の会話を聞いた後では、彼女が墨田英昭を裏切ったことを知っているので、今は全く同情できない。むしろ、こうなって当然だと思う。

「消えろ!俺が気を変えないうちにな!」

墨田英昭は完全に苛立っていた。思わず汚い言葉が飛び出し、その声はまるで相手を震え上がらせるような威圧感があった。清水菫の体がびくっと震えるのがはっきりと見えた。

何か言いたいけど、言えない。そんな葛藤した表情をしていた。

しばらく沈黙が続いた後、清水菫は泣きながらその場を去っていった。

清水菫が去ったことで、この「ドラマ」も終わりを迎えた。私は再び酒を手に取り、何事もなかったかのように飲み続けた。

墨田英昭もすぐに立ち去るだろうと思っていたが、どうやら自分の隠れ身の術を過信していたようだ。

「さっきからずっとあっちでいい見物をしてたみたいだが、見終わって何か感想はないのか?」

墨田英昭の低くセクシーな声が耳に届き、私は一瞬驚いて周りを見回した。そこには私しかいなかったので、彼が私に話しかけていることをようやく理解した。

私は自分がうまく隠れていると思っていたが、どうやら彼には最初から見抜かれていたようだ。さすがに彼を侮っていたらしい。

彼の方を見ると、その黒い瞳が私をじっと見つめていた。彼の目には、私には理解できない複雑な感情が宿っていた。

「あなた、私に話しかけてるの?」

私はぎこちなく笑いながら、墨田英昭の視線を避けるようにした。何と言っても、盗み聞きするなんて、全く褒められたことではないから。

「お前に話してるんだ。他に誰かと話してると思った?」

墨田英昭は眉をひそめ、大股でこちらに歩み寄ってきた。

彼が一歩近づくたびに、私の心臓は激しく鼓動し
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