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第28話

私が条件を提示すると、視線は吉田俊夫の顔に注がれた。

彼の瞳がわずかに揺れたが、ほとんど迷うことなく私の要求を受け入れた。

「わかった、できるよ。これからは夏野美穂だけに尽くす。もう他の女性とは絶対に曖昧な関係を持たない」

私は冷淡な目で吉田俊夫を一瞥し、「今日の言葉を忘れないで。もし夏野美穂を裏切るようなことがあれば、絶対に許さないわよ」と冷たく言い放ち、彼の前を通り過ぎ、大股でその場を去った。

正直、男の約束なんて十中八九は嘘だ。でも、もし私だったら、吉田俊夫に二度目のチャンスなんて与えない。それでも、夏野美穂が吉田俊夫を本当に好きであることは知っていたし、今この場で何の証拠もなく彼の二股を暴いてしまえば、かえって状況を悪化させるだけだ。

それに、どこかで期待している自分もいた。吉田俊夫が私の言葉を真剣に受け止め、これからは夏野美穂一筋になってくれることを。私は本当に、夏野美穂が彼と幸せになり、結婚して家庭を築いてほしいと思っていた。

席に戻って数分後、ようやく吉田俊夫も戻ってきた。彼がわざと時間をずらして戻ってきたことはわかっていた。

「吉田俊夫、トイレに行くだけでどうしてそんなに時間がかかったの?」

吉田俊夫が席に戻ると、夏野美穂は嬉しそうに彼にくっつきながら、小さく唇を尖らせて不満そうに言った。その目には少しの責める気持ちも感じられた。

「お腹の調子が悪くてね、トイレに少し長居してしまったんだ。心配させてごめんよ」

吉田俊夫は言い訳しながら、心配そうにこちらを一瞥した。私が何も言わなかったことで、彼はほっとしたようだった。

「お腹の調子が悪いの?どうして早く言わなかったの?大丈夫?病院に行かなくていいの?」

それを聞いて、夏野美穂は心配そうに、すぐに吉田俊夫に寄り添い、彼の健康を気遣った。

「大丈夫、大丈夫。家に帰って薬を飲めば治るから、そんなに心配しないで」

吉田俊夫は少し不自然な表情を浮かべ、夏野美穂にそう答えた。

彼が嘘をついていることは明らかだったので、私は内心で彼を軽蔑していた。別の女性と曖昧な電話をしながら、今度は体調不良を装って夏野美穂の同情を引こうとしているなんて。

私は手元の水を一口飲み、彼を暴露したい衝動を抑えた。

「美香、吉田俊夫が体調悪そうだから、今日はこれで終わりにしようか。次に時間がある時にまた
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