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第3話

「美香、あんたやりすぎだよ!なんで人に手を出すんだ?いつからそんなに気が荒くなったんだ?」

佐藤良一が勢いよく顔を私に向け、その目には怒りと非難が明らかに浮かんでいた。

心臓がまるで引き裂かれたかのような痛みを覚え、顔色は青ざめ、佐藤良一を見つめた。彼の心の中では、私は秦野夢美には到底及ばない存在なのだと。

でも私こそ彼の婚約者だ。明日、私たちは結婚する予定だったのに、彼は私たちの新居で、別の女と抱き合っている。それに、相手は大学時代からの親友、秦野夢美だ。

「秦野夢美、ここから出ていけ!ここは私の新居だ、出て行け!」

私は突然駆け寄り、狂ったように秦野夢美の腕を掴んで、彼女を家から追い出そうとした。

「もういい加減にしろ!山本美香、お前やりすぎだ!」

佐藤良一が飛びかかってきて、私を地面に押し倒し、秦野夢美をしっかりと抱きしめた。

尻の痛みよりも、心の痛みのほうが遥かに辛かった。立ち上がり、苦笑いを浮かべながら佐藤良一を見つめた。この瞬間、私は完全に悟った。私は彼にとって、ただの第三者以下の存在だったのだ。

「佐藤良一、私はあなたが憎い!」

私は彼に向かってそう叫んだ。叫び声はヒステリックで、まるで全身の力を使い果たしたかのようだった。

私は団地を飛び出し、ただひたすらに走り続けた。激しい運動をすることで、少しでも先ほどの光景を思い出さないようになれる。

あの場面は何度も何度も頭の中に浮かび上がってくる。結婚前夜に、婚約者が親友と抱き合っている姿、そしてその親友が婚約者の子供を産んでいたという事実。こんなドラマのような話が、まさか今、自分の身に起こるなんて思いもしなかった。

7年の愛と絆を積み重ね、明日からは幸せに暮らせると信じていた。永遠に一緒にいられると信じていた。

だが、今夜見たすべてが、私の幻想を打ち砕いた。もう、彼はもう「一生君を愛する」と誓っていたあの佐藤良一ではなかった。

バー。

空気にはタバコと酒の匂いが充満し、音楽は耳をつんざくような大音量で鳴り響いていた。男はダンスフロアで体を激しく揺らし、私は隅の席で強い酒を次々と飲み干していた。感情は限界に達しつつあった。

結婚前夜に、婚約者と親友がベッドを共にしている姿を目撃するなんて、本当に滑稽で悲しい。

7年間、二人の間に何かがあるなんて一度も疑ったことはなかった。二人は私が最も信頼し、最も親しい人たちだったから。

しかし、今では私が信じていた二人が同時に裏切っていたのだ。世界中で私以上に惨めな人間はいないだろう

頭の中には秦野夢美が裸で、佐藤良一の上で狂ったように体を揺らしている姿が浮かんでくる。佐藤良一の顔には満足そうな表情が浮かび、本当に滑稽で、気持ち悪い。

そして悠、あの子は佐藤良一の子供だったなんて。二人は単なる浮気ではなく、子供まで産んでいたのだ。私はずっと、秦野夢美が悠の父親について語りたがらないのは、何か傷ついた過去があるからだと思っていた。それを気遣って、ずっとその話題を避けていたが、今では自分がいかに滑稽だったかが分かった。

いったい彼らの隠し方が上手かったのか、それとも私が鈍すぎたのか?

こんなに長い間、全く気づかなかったなんて。

心は乱れ、混乱して、私はまた一口、強い酒を大きく仰いだ。喉を焼くような感覚で、むせながら涙がこぼれ落ちたが、心の重さは消えず、少しも気分が晴れなかった。

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