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第7話

問題は、私こそが彼の正真正銘の恋人で、今日はまさに私たちの結婚の日だということだ。それにもかかわらず、彼はこんな言葉を私に言いに来た。長年愛してきた彼がここまで恥知らずとは思いもしなかった。

「美香、ありがとう......」

おそらく彼も内心では罪悪感を感じているのだろう、佐藤良一は小さな声でそう言ったが、その声には自信が欠けていた。

私に感謝?笑わせるな。

彼の顔が少し軽くなったのを見て、私の心は生々しく痛んだ。かつて私を愛し、一生幸せにすると誓ったあの彼が、私が結婚式をキャンセルしたから「ありがとう」と言っている。

本当に笑えるし、同時に悲しくもあった......

「出て行け!もう二度と私の前に現れないで!」

私はドアの方向を指さしながら、その言葉をほとんど叫ぶように言った。

自分が彼に問い詰めに行きたくなる衝動を抑えられないことに怖かった。

「聞こえたか、さっさと出て行きなさい!」

美穂は憤然とし、ほうきを手にして力強く佐藤良一を叩いた。

佐藤良一が出て行ったあと、私は全身の力が抜けたかのように地面に座り込み、目には生気がなかった。

クズ男であっても、七年間愛してきた相手であり、ここまで来て心が痛まないはずがない。

「美香、泣きたいなら泣いていいんだよ、泣けば少しは楽になるの」

美穂は私のそばにやってきて、私をしっかりと抱きしめ、声には心の痛みが込められていた。

「私は泣きたくなんかない、こんな卑しいクズ男のために泣くつもりなんてないわ。美穂、これからは私の前でこのクズ男の話をしないで」

私は少し顔を上げたが、それでも涙は止まらずに流れ落ちてきた。

「美香、あなたがどれだけ辛いかはわかってる。思いっきり泣いて、その後でクズ男を忘れ、新しい生活を始めようよ」

美穂は私を強く抱きしめ、その声には彼女自身も涙を堪えているような響きがあった。彼女は私の最も親しい友人で、私がこんな風に苦しんでいるのを見て、きっと心を痛めているのだろう。

どれくらい泣いたのか覚えていない。目が腫れ上がり、頭もぼんやりとした感じで、大泣きした後はすべての力が抜けたかのようだった。

泣き疲れた後、私は部屋に戻って再び寝転び、丸一日、ほとんどベッドで過ごしていた。

夢の中でも、佐藤良一のクズ男が夢美とベッドで絡み合う姿が繰り返し現れた。

私がこんな風に自分を追い詰めるのを見ていられなかったのか、美穂は部屋に入ってきて私を起こした。それは私が失恋してから三日目のことだった。

「美香、起きて何か食べなさい」

私は布団の中に頭を隠し、何も言いたくなかった。今の私には食事なんて考えられない。

ここ数日、私はもう狂いそうだった。目を閉じればすぐに、佐藤良一の裏切りと欺瞞が頭の中に浮かび上がってくる。

「食べたくない!」

私はうつむいてそう言った。今はただ布団にくるまっていたい、それ以外のことは何もしたくなかった。

しかし、美穂はもう私の様子に我慢がならなかったようで、力強く布団を引っ張り、怒りを込めて私を見つめた。

「山本美香、あなたはいつからこんなに情けなくなったの?こんなクズ男のために自分を傷つける価値はあるの?」

私は答えず、心の痛みはまだ消えないままだった。クズ男であっても、七年間愛してきたのだから、この七年間、私はすべての感情を彼に捧げてきた。一生一緒にいられると思っていた。

幸せへ一歩踏み出したと思ったが、私を待ち受けていたのは底の見えない深淵だった。今の私はその底に落ちて、どうしても抜け出せないでいる。

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