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第8話

「美穂、今の私、どうすればいいの?」

私はぼんやりと窓の外を見つめ、視線は迷子になったように彷徨っていた。

こんなに長い間、佐藤良一は私のすべてだった。私のすべては彼を中心に回っていた。今、彼がいなくなった私は、すべての活力を失ってしまった気がする。自分が何のために存在しているのか、何をしても意味があるのか、もうわからない。

「美香、たかがクズ男じゃない。今のうちに彼の本性に気付いてよかったんだよ。結婚してから気付いたんじゃ、もう遅かったんだから」

夏野美穂は私の隣に座り、慰めるように抱きしめてくれた。彼女の目には私への同情が浮かんでいた。

「でも、やっぱり心が痛い......」

美穂を強く抱きしめたまま、私の涙はもうこの数日で全て流し尽くしたはずなのに、それでも心の痛みはどうしても消えなかった。

「美香、きっとあなたはあのクズ男を忘れることができるよ。それに、あんなクズ男よりもずっと素晴らしい男を見つけることができる。そしたら、あのクズ男なんて後悔するがいいんだから!」

美穂は私の目を見つめながら、力強くそう言った。

私はこの瞬間、そばに良い友達がいてくれることを本当に幸運に感じた。彼女がいなければ、私が今まで耐えられていたかどうかわからない。

「さあ、起きて服を着替えて化粧しましょう。今日はショッピングで気晴らしをするのよ。今日を境に、佐藤良一というクズ男をあなたの人生から完全に消し去るの!」

美穂は私をベッドから引きずり下ろし、強引に服を着替えさせて化粧させた。

私たちは近くの百貨店に来て、婦人服売り場をぶらぶらしていた。

以前、この百貨店が佐藤良一の勤める会社のものだと聞いたことがある。それを思い出すと、私は本能的に嫌悪感を抱いたが、夏野美穂にしっかりと手を引かれていた。

美穂が私をこの暗い影から引っ張り出そうとしていることを知っていたので、心の中で反発を感じながらも、それでもここから離れようとはしなかった。

婦人服売り場を漫然と歩き回っているうちに、美穂の手には次々と戦利品が増えていったが、私は何も買うことができなかった。今の私はショッピングを楽しむ気持ちにはなれなかったから。

ふと見ると、一人の男と女の姿が目に入った。それは佐藤良一と秦野夢美だった。心が痛み、私は狼狽しながら美穂の手を引いて立ち去ろうとした。

「美香、何で私を引っ張るの?まだ見てるのよ」

美穂は遠くにいる二人に気付いていなかったため、私の行動に不満そうだった。

「美穂、他の場所を見に行こう。ここはもう嫌だ」

私はこちらに向かって歩いてくる二人に背を向け、気付かれたくなかった。

美穂は眉をひそめ、私を不思議そうに見つめていた。どうして突然こんなに変わったのか理解できないようだった。

彼女が何か言おうとしたその瞬間、歩いてきた二人は私に気付いたのかもしれない。

「美香、まさかここで会うなんて本当に偶然ね。ほんの数日でショッピングする気分になるなんて、失恋の痛みからもう立ち直ったみたいね」

耳元で秦野夢美の嘲るようで得意げな声が聞こえた。

痛みを突かれて、心が傷つかないはずはなかった。しかし、この二人の前で弱さを見せるつもりは絶対になかった。彼らはそんな価値もない。

佐藤良一と秦野夢美を見て、美穂はやっと私がさっき彼女を引っ張って行こうとした理由を理解したようだった。

彼女は私の前に出て、私を背に庇った。

「誰かと思ったら、数年間やっていた愛人だね。どう、ついに愛人から本妻になれて、どんな気分?」

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