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第15話

墨田英昭がこの会社を経営していることも知っていた。でも、広告会社は彼にとって副業に過ぎないし、彼の無数の事業の一つでしか過ぎない広告会社会でうなんて、そんな確率は0.1%くらいだと思っている。

今はただ、大企業でしっかりと成長していきたいだけだ。もうこんな風に堕落している場合じゃない。自分の夢のために努力しなければならない。

私は資格もあるし、職務経験も豊富だ。普通の会社であれば、採用される自信は100%ある。しかし、巨盛では採用されるかどうか確信は持てない。

巨盛広告は社員の待遇が非常に良く、その分、採用基準も非常に厳しい。だから、順調に入社できるかどうか、内心では少し不安だ。

面接を終えて会社を出る時、私はまだ少し現実感がなかった。巨盛は私の想像をはるかに超えて大規模で、社員は数千人もいる。

ふと、墨田英昭の顔が思い浮かんだ。30歳くらいの男性で、こんなに多くの事業を手がけ、しかも広告会社だけでも数千人の従業員を抱えている。墨田英昭の富と能力は、私の想像を遥かに超えていた。彼こそ、私が今まで出会った中で最も若くて、最も裕福な男に違いない。

でも、そんなことはどうでもいい。とにかく巨盛に無事に入社できれば、それでいい。

私は一人で歩道を歩きながら、何度も心の中で「面接に受かりますように、絶対に受かりますように」と祈った。

どれくらい歩いたのだろうか。突然、後ろからクラクションの音が聞こえてきた。私はイライラして眉をひそめた。誰だって、後ろでずっとクラクションを鳴らされたら気分が悪くなるものだ。

「山本美香」

突然、背後から聞こえてきた声は、私にとってこれ以上なく聞き慣れた声だった。

心が一瞬ざわついたが、聞こえなかったふりをして、足を速めた。このクズ男とは一秒でも会いたくない。

「美香、止まれ!」

佐藤良一は急いで追いかけてきて、私の前に立ちふさがり、不満そうに私を見つめた。

「何のつもり?邪魔なんだけど」

私は冷たい目で佐藤良一を見上げ、冷ややかな声で言った。

「聞きたいことがあるんだ」

私の冷たい態度にもかかわらず、彼は焦ったように私の目を見つめて言った。

「話すことなんてないし、あなたの質問に答える義務もないわ」

そう言って、私は彼を避けて歩き出そうとした。

今や私たちには何の関係もないのだから、彼に答える義務などない
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