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第17話

私は、清水菫がこの言葉を言い終えた後、墨田英昭の胸に飛び込み、彼に抱きつこうとするのを見た。

ここまで自分を卑下する女性に対して、どんな男でも拒むことはできないだろうと思った。しかも、清水菫は美人で、今をときめくトップスターだ。

彼女と少しでも関わりを持ちたいと思う男は、隣町まで列を作るだろう。墨田英昭もさすがに心が揺れるだろうと思っていた。

しかし、その後の展開は私の予想を大きく裏切った。墨田英昭はほとんど躊躇せず、清水菫を冷たく突き放し、その顔は相変わらず冷たいままだった。

「さっきも言ったが、俺たちは終わったんだ。俺の言葉を三度繰り返させるな!」

墨田英昭は冷たい目で清水菫を見つめ、少しの情けも見せなかった。

おお、この男は本当に冷酷だな。女を振るのに、全く未練も見せず、こんなに堂々としているとは。どう考えても、いい男ではない!

私は心の中でこう思って、墨田英昭に「クズ男」の烙印を押した。

でも、考えてみれば、佐藤良一のような小さな部門マネージャーですら、二股をかけていたんだからな。いや、二股どころか、まだ私は佐藤良一と肉体関係すらなかったんだし......

ましてや、墨田英昭のように有能で金持ちの大富豪なら、周りにいる女の数なんて数えきれないだろう。女を取り替えるのなんて、服を着替えるようなものだと思う。

「英昭、どうして私にこんなに冷たいの?私はこんなにも長い間、あなたのそばにいたのに。簡単に捨てられてしまうなんて、理由ぐらい教えてくれてもいいじゃない!」

清水菫は泣きながら、哀れな声で訴えた。女性としては、少し同情してしまうような涙声だった。

「本当に理由を聞きたいのか?清水菫、俺は今、お前に少しでも顔を立てているんだぞ!」

墨田英昭は冷ややかに清水菫を見つめ、相変わらず冷たい声で言った。

「英昭、それはどういう意味なの?私にはさっぱり分からないわ」

清水菫は彼を見つめ、整った眉をきつく寄せていた。

墨田英昭は答えず、ポケットから数枚の写真を取り出し、彼女に投げつけた。私の位置からは写真の内容が見えなかったが、墨田英昭の次の言葉で何の写真かは大体分かった。

「今、俺の手元にはお前が他の男とホテルで過ごしている証拠があるんだ。俺がなぜお前を捨てたか、分からないか?清水菫、最初から言っていただろう。俺の女になるなら、潔白でな
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