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第2話

「あなたが望んでいないのに、どうして結婚するの?結婚したら、私たちが今のように頻繁に会うことはもうできなくなるんだよ」

「彼女に無理やり結婚させられなければ、絶対にこんなことはしなかった」

良一は少し感情的にそう言い放ち、すぐに身を翻して夢美を押し倒した。

「あなたの婚約者が本当に来たわ」

夢美は両手で良一の胸を押し返し、寝室の扉の方向を指さした。

「そんなはずはない、さっき彼女を送って行ったばかりなのに、どうして......」良一は言葉を発しながらもついドアのほうを見てしまった。「美香、どうしてここに?」

私を見た瞬間、彼はまるで石像のように硬直し、表情が凍りついていた。

慌てて夢美の上から離れた良一は、動揺した目で私を見つめていた。

彼の体にあった欲望はすでにどこかに消え失せ、慌てふためいて体を隠すことも忘れていた。

夢美は布団に包まり、余裕のある表情で私を見つめ、口元には冷たい嘲笑が浮かんでいた。

その時の私の顔には涙がいっぱいになり、怒りと憎しみに震えて、発散したい気持ちになった。その残酷な真実の前で、私はただ背を向けて去ることしかできなかった。

良一は腰にバスタオルを巻き、すぐに私を追いかけてきた。彼の目には罪悪感が浮かんでいる。「美香、話を聞いてくれ......」

「まだ何を言い訳するつもりなの?さっき全部見たわ、まだ何か言い訳があるの?」

心が痛くて息もできない。実は、彼の説明に少しでも救いを期待していた。

夢美は良一のシャツを身にまとい、大きなカールのかかった髪が肩に無造作にかかっていて、さらに妖艶に見えた。

彼女は私の前にやってきて、挑発するような目で見下ろしながら言った。「悠は良一の子よ」

悠、秦野夢美の三歳の子供。まさか良一の子供だなんて......

たった今心の中にわいた微かな希望が、夢美のその言葉で、頭の中が轟音を立て、空が崩れ落ちるように崩れ去っていった。

私は緊張しながら良一を見つめ、彼が否定してくれることを期待していた。しかし、予想通りにはなれなかった。

彼はわずかに頭を垂れ、その目には罪悪感が漂っていた。それは悠が彼の子供であることを黙認しているようだった。

心が切り裂かれるように痛む。殴りたい、罵りたい気持ちがあるのに、この瞬間全ての感情が心に堆積し、言葉にすることができない。

私は怒り、憎しみに満ちていた!

この二人の裏切り者は私の背後でこんなことをしていたなんて。七年間、私は一人を深く愛し、もう一人を親友として信頼していたのに、彼らは裏でこんなことをしていただけでなく、子供まで作っていたのだ。

「この裏切り者!」

心中の怒りと屈辱をもう抑えきれず、私は夢美に向かって手を上げ、彼女に平手打ちをくらわせた。その力があまりにも強く、私自身の手も痛くて痺れたほどだ。

「夢美!」

良一の声が聞こえてきた。その語調には夢美への心配が満ちていた。

夢美は私に打たれて顔が横に反らされたが、すぐに頭を振り戻し、怒りの目で私を睨みつけた。

「夢美、大丈夫か?痛くなかった?」

良一は心配そうに夢美を見つめ、その光景は再び私の心を刺した。

私の目の前で、婚約者が私たちの関係を壊した第三者を心配するなんて、私が憎まないでいられるわけがない!

「良一、彼女に打たれたの......顔が痛い......」

夢美は悲しげな顔を装い、良一の腕にすがりついた。彼女の頬を涙が流れ落ちていった。

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