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控えめな総裁、燃え上がる愛
控えめな総裁、燃え上がる愛
Author: わかん

第1話

デリュイガーデンマンション。

夜、十時。

私はドアを開けて中に入り、照明のスイッチを押した。客室のクリスタルランプの光が、私のシルエットを大きな窓に映し出す。

この部屋は明日私たちが結婚する新居で、私の婚約者、佐藤良一は会社の部長で、ハンサムで、いつも私に優しい。私は、こんなに私を愛してくれる男性と結婚できることを、とても幸せに思っていた。

結婚前夜のしきたりに従って、私たちは今夜一緒に過ごすことができない。良一は新居に泊まり、私は親友の夏野美穂の家に泊まることにした。

寝る前に、明日使うものを確認していたところ、うっかり花嫁のヴェールを忘れてしまったことに気づいた。

私は、彼に驚きを与えたいと思い、電話せずに静かに新居に戻った。明日から佐藤と永遠に幸せに暮らせるという考えが頭に浮かび、私は微笑んだ。

スリッパに履き替え、リビングルームに向かった瞬間、主寝室から女性の甘い声が聞こえてきた。

私は驚いて足が重くなったように感じたが、気づけば無意識に主寝室に向かって歩いていた。

部屋のドアは少し開いており、その女性の声がますます鮮明になってきた。その声が私の心に重く響くたびに、私は怒りに燃え上がった。

私はドアにそっと手をかけると、簡単に開いた。

ベージュのハイヒールが無造作に置かれていて、女性の持ち物が床に散らばっている。この光景に、さまざまな思いがよぎる。

私は心の中の怒りと混乱を抑えながら、ベッドを見た。その瞬間、心がナイフで切り裂かれるように痛み、息ができなくなった。

大学で四年間同じ部屋に住んだ親友、秦野夢美が、明日結婚するはずの婚約者の良一と一緒にいた。

夢美は私を一瞥し、その目には挑戦的な光が宿り、声はますます挑発的になった。

部屋の光景がすべて目に入った瞬間、呼吸が痛いほど苦しくなった。私の婚約者が別の女性を抱いて、夢中になっている。

怒りと屈辱が私の胸を押し寄せ、拳を握りしめながら、二人を引き裂こうという衝動を必死に抑えた。

夢美は挑発的な視線を送りながら、さらに良一を誘惑していた。

「明日があなたと山本美香の結婚式なのに、こんなことをして罪悪感はないの?」

「何も罪悪感なんてないさ。結婚前夜にこんなことをしても、普段と何が違うんだ?それに、俺たちのことなんて、彼女にはわかりっこないさ」

良一の声には抑えた感情がこもっていた。

「万が一、彼女が突然来て、私たちがこんなことをしているのを見たらどうする?彼女は結婚をやめるかもしれないよ」

夢美は私を挑発するように見つめ、冷笑を浮かべた。

「彼女は来ないさ。それに、仮に知ったとしてもどうでもいい。結婚しなくても別にいいんだ。もともとそんなに早く結婚したいとは思っていなかったからな」

良一は気にするそぶりもなく、夢美との情事に没頭していた。

「じゃあ、なぜ結婚するの?結婚したら、私たちは今のように頻繁に会えなくなるわよ?」

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