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慌てて元旦那を高嶺の花に譲った後彼が狂った
慌てて元旦那を高嶺の花に譲った後彼が狂った
著者: 楽恩

第1話

結婚三周年記念日当日。

 宏は私がずっと前から好きだったネックレスを買ってくれた。オークションで高い値段で。

 皆がこう言っていた。あの人はきっと私のことを愛してしょうがない。

 しかし、蠟燭を灯して、ロマンチックなディナーを用意する時、ある動画が送られてきた。

 その動画に、宏が知らない女性にあのネックレスをつけてあげた。

 「おめでとう、ようやく新しい人生へ」

 私たちの結婚記念日に、彼の憧れだった人がちょうど離婚したという。

 まさかこんなことに遭うなんて、未だに信じられない。

 宏との婚姻は自由恋愛によるものではないが、

 彼は人前でいつも妻を甘やかしすぎた夫でいた。

 テーブルの前に座って、冷めたステーキとXの検索トレンドを見ていた。

「江川宏散財数千万 奥さんの笑顔に尽くす」

 まだトップに載っていた。

 なんて皮肉だろう。

 深夜2時、黒色のマイバッハがやっと庭に帰ってきた。

 フレンチドア越しに、男が車から降りたのが見えた。オーダーメイドのダークスーツを完璧に着こなしていて、背の高い凛々しい姿が実にエレガントだった。

 「まだ起きているのか」

 宏がライトをつけ、ダイニングルームにいる私を見て、意外そうに尋ねた。

 立とうとしたが、足が痺れたせいでまた椅子に。

 「待っているから」

 「そんなに会いたいか」

 宏が何事もなかったように笑って、水を飲みにきた。テーブルに載っている一口も食べていない料理を見て、少し驚いたようだった。

 彼が何も言わないつもりなら、私ももう少し付き合おうか。彼に手を出し、微笑みながら、

 「ハッピー三周年。プレゼントは?」

 「ごめん。今日は忙しくて、忘れたんだ」

 一瞬戸惑ったが、今日が結婚記念日であることをようやく気付いたみたい。

 そして私の頭を触ろうとして、自分が無意識に避けた。

 その手が今晩ほかに何を触ったか分からないから、ちょっと気分が悪い。

 また戸惑った顔をした。

 私はただ笑って言った。

 「もう知ったよ。私が大好きなあのネックレスを買ったでしょう。トレンドにも出たよ。早く出して」

 「南…」

 宏が手を下げて、無表情に淡々と言った。

 「そのネックレスは伊賀の代わりに買ったものだ」

 ……

 ネット上の話しの通り、タチはこういう時でも使えるんだね。

 もはや笑顔を維持できなくなった。

 「そう?」

 「うん。知ってるだろう。あの人は女友達が多いって」

 表情も口振りもまったく隙がなかった。

 明かりに照らされていた完璧な顔を見て、突然こう思った。

 私は一度たりとも目の前の男を理解したことがないかもしれない。

 果たしてこれが本当に初めての噓なのか、それすら言い切れなかった。

 どうやら今まで宏を信頼しすぎた。

 もしその送り先の分からない動画を見なかったら、今は彼の言い分を信じてただろう。

 黙っている私を見て、宏が優しく慰めようとした。

 「こんな大事な日を忘れた俺が悪い。明日必ずプレゼントを買ってくるよ」

 「あのネックレス以外のものは要らない」

 彼にもう一度チャンスをやりたかった。

 動画の角度のせいで、女の顔がはっきり見えなかった。

 浮気じゃないかもしれない。

 宏の躊躇した様子を見て、私が戸惑って聞いた。

 「ダメなの。伊賀はあなたのタチでしょう。あなたのために、女の子にお願いするのがそんなに難しいの?」

 宏が少し黙り込んでいたが、私の意地に参ったようで、切り出した。

 「明日彼に聞いてみる。他人へのプレゼントを取り戻すのはちょっとあれだし。」

 いったいどっちに聞くつもりだろうか。

 問い詰めることはできなかった。

 「はい」

 「ずっと俺を待ってたの。お腹空いたままで?」

 宏がテーブルを片付けはじめた。両手の指骨がくっきりしていて、白い食器によく合っていた。

 私が頷きながら、

 「うん、記念日だから」

 彼と一緒に片付けようとしたが、動きが優しく止められた。

 「座っていいよ。俺がそばを作るから待っててね」

 「うん」

 その様子を見て、ますます疑いが晴れていった。

 浮気した男が本当にこんなに平然といられるのか。

 宏が裕福に育てられたが、料理の腕はおかしいほど上手いだった。あっという間に美味しい料理が出される。

 けど、普段はほとんど料理しないだった。

 10分ほど経つと、見るにも美味しそうなそばが完成した。

 「美味しい」

 一口食べると、思わず褒め言葉を言い出した。

 「誰に料理を学んだの。外のレストランよりも美味しいかも」

 宏がまた何かの思い出に浸ったみたいで、30秒後に返事をした。

 「留学の二年間、母国の料理が恋しくて、自分で作り始めた」

 彼の答えに特に気にしていなかった。

 上の部屋でお風呂をして、ベッドに寝った時、既に3時すぎだった。

 後ろに彼の熱い体がくっついてきて、首元にアゴが軽く擦っていた。

 「したい?」

 低い声が紙やすりで磨いたようで、吐息が肌に落ちて、体が思わず震えた。

 まだ返事してないのに、宏が上から私を取り囲み、片手がシルクワンピースの下に入ってきた。

 セックスのことになると、いつもこんな強引だった。

 しかし、今回はそうはさせない。

 「あなた、今日はダメ…」

 声も体のように震えていた。

 「ん?」

 宏が私の首元を何回もキスして、手を下に触って、恥ずかしいことを言い始めた。

 「ここがこんなに熱く歓迎してくれてるのに、あなたがダメって言うの」

 「今日、今日お腹が痛くて…」

 その話を聞くと、宏がようやく動きを止めた。耳垂れを軽くキスした後、私を抱きしめた。

 「忘れてた。もうすぐ生理だよな。早く寝よう」

 ほっとした心はまた苦しくなった。彼に見つめながらこう言った。

 「私の生理は月初の頃、今月もう過ぎたよ」

 「そっか」

 宏が何とも思わない顔でまた話した。

 「じゃ俺が間違えちゃったな。大丈夫?明日佐藤さんと病院に行ったらどうだ」

 「今朝行ったよ」

 「医者はなんと言った」

 「医者は…」

 私が目を下に向いて、彼に話すかどうかを悩んでいた。

 医者の話によると、私は今妊娠5週間で、お腹が痛いのは流産の恐れがあるから。まず薬を飲んでプロゲステロンを補充して、二週間後にまた胎児の心拍をはかる予定だった。

 結婚記念日で子どもができたことが分かって、これ以上のプレゼントはなかった。

 私は検査結果をガラス缶に入れ、手作りケーキの中に置いた。宏へのサプライズだと思って、ディナータイムで伝えるつもりだった。

 あのケーキは今まだ冷蔵庫の中に。

 誰も気付いてくれなかった。

 「なんでもないって。最近冷たいものを飲み過ぎたかな」

 ひとまず隠すことにした。

 明日あのネックレスが戻ったら、何よりのハッピーエンドだ。

 もしそうに行かなかった場合、私たちの婚姻に第三者がいるのは確実で、到底維持できないだろう。子どもの存在を彼に教えるのも、元の意義が変わる。

 この夜、私が眠れなかった。

 「夫が浮気したかも」、こういうことを平然と納得する女はいないだろう。

 想像でもしかったが、気になっていたことがすぐに続きを見せてくれた。

 翌日、宏がまだ顔洗いをしている時、誰かがノックをした。

 着替えてドアを開けると、佐藤さんが下に指差して、

 「若奥様、アナ様がお見えです。うちにお返しものがあるらしいです」

 江川アナは宏の義理の母親の娘であった。宏より二つ年上で、二人には血縁関係がなかった。言われてみれば、江川家のお嬢様でもある。

 佐藤さんは江川家からの使用人で、いつも彼女を「アナ様」と読んでいた。

 おかしいなあ。普段はアナとの接点は江川家の家族宴会ぐらいで、ものを借りた覚えもないし。

 「お返しもの?」

 「そうです。とても綺麗なアクセサリー入れに入っていて、多分アクセサリーだと思います。」

 そう返事をする佐藤さん。

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