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第75話

拓海から電話がかかってきて、何か特別な理由で明日香の交換留学が一週間早まったと聞いた。

電話で、彼がとても嬉しそうにしているのがわかったし、実際私もほっとしていた。

やっぱり、見なければ気にもならないし、明日香が完全にいなくなれば、ようやく静かになった。

彼女はまるで時限爆弾のような存在で、いつか大変なことを引き起こしそうだった。

私は無意識に拓海と翔太兄を比べてしまった。

私が困った時、拓海は知らないかのように私を放っておくか、もしくはその場を立ち去っただけ。

でも、翔太兄は、わざとであれ偶然であれ、いつも私を守ってくれていた。

この点に関しては、父が言ったことは正しかった。翔太兄は本当に頼りになる兄のような存在で、私も彼にますます依存していった。

自分では自立心が強いと思っていて、できることは自分でやりたいし、他人には迷惑をかけたくなかった。

でも、本当のところ、私はまだ完全に大人になりきれていない女の子で、心の中にはいつも小さなプリンセスがいて、誰かに愛されたいといつも期待していた。

翔太兄は、両親以外で私を一番大切にしてくれる人だった。

私は彼の自由な時間を独り占めし、彼の後ろをいつもついて回る女の子になってしまった。

時々、翔太兄が忙しすぎて、二、三日顔を見ないと、なんだか落ち着かない気持ちになって、何かが足りないように感じた。

翔太兄も私の気持ちをわかっているみたいで、どんなに忙しくても時間を作って電話をくれたり、三食とも欠かさずに私の好きな味の料理を配達してくれたりした。

時々私は思う。翔太兄は本当はお兄ちゃんじゃなくて、お母さんなんじゃないかと。

帰る前に、明日香が私のところに来た。彼女は私の手を握って、鼻水と涙を流しながら無実を訴えた。

彼女の性格を知っていた私は、彼女が何をしても偽善的に見えてしまった。

彼女の芝居を見るのが面倒くさくて、私は彼女に「言いたいことがあるなら言って、そんなことしても無駄だよ。私は拓海じゃないから、たとえ血の涙を流しても心が痛むことはないよ」とはっきり言った。

明日香は泣きそうな目でしょんぼりしながら、嘘をついた。

「悠斗とはただの同郷の仲で、何もないの。きれいな関係だから、誤解しないで」と。

「あなたが来なければ、私は本当に何も考えていなかったのに」

明日香と伊藤悠斗のことに
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