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第80話

翔太兄は慣れた様子で一軒の民宿を見つけた。車の音を聞いた宿の主人は、翔太兄と長年の友人のように親しげに話しながら出迎えに来た。

「翔太、久しぶりだな。ついに彼女を連れてきたのか?それは良かった、これで君のことを心配しなくて済む」

「違いますよ、おじさん、変なこと言わないでください。私は佐藤美咲です、彼は私のお兄さんです」翔太兄の彼女に間違われて、少し恥ずかしくなった私は、翔太兄が答える前に先に言ってしまった。

「義理の妹か?翔太、君の妹はこの景色よりも綺麗だな。しっかり頑張れよ」おじさんの目には何かが宿っていた。それはまるで賞賛のようで、しかしもっと多くは激励の色だった。

翔太兄は民宿の主人と握手し、力強く二度振った。それはまるで何かの約束を交わしているかのようだった。

民宿の主人は豪快に笑い、私たちに「自由に楽しんでいけ」と言って、食事と宿の準備をしに戻っていった。

夜には典型的な北方の家庭料理を食べたが、その味が驚くほど美味しくて、満腹になりすぎて歩くのも辛いくらいだった。

翔太兄は私を笑いながら、手を引いて村の中を散歩しながら食事を消化させてくれた。

「翔太兄、どうしてここは翠嶺っていうの?」

翔太兄は笑って、私の頭をポンポンと叩きながら言った。「それはね、ここが全部緑の山々だからだよ」

私は恥ずかしそうに舌を出し、こんなことも知らなかった自分が恥ずかしくて、翔太兄に笑われるのも当然だと思った。

その日の夕方、翔太兄がトランクを開けたとき、その装備の充実さに私は驚愕した。

なんと、彼は全ての画材を持ってきていたのだ。夕焼けに向かって、一つ一つ丁寧に取り出して準備を整えて、私を画架の前に座らせると、一本の筆を私の手のひらに置いて言った。「一緒に描こう」

私は動かずに四時間もかけて絵を描いた。夕日が沈み、月が昇り、民宿の庭の四隅のランプが全て点灯し、私たちを照らしていた。しかし、どれだけ頭をひねっても、ここの驚くべき美しさを一枚の絵に収めることはできなかった。

そして細密画は細部が重要だが、四時間が過ぎても大まかな輪郭しか描けず、色は後でじっくりつけるしかなかった。

私が描いたのは、午後に実際に足を踏み入れたあの小川だった。石や小魚、遠くの山体や紅葉、さらには川辺の草までもが生き生きと紙に描かれていた。しかし、何かが足りないと感じ、絵
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