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第84話

またみんながひとしきり盛り上がり、「翔太兄がラブレターを持ち帰って、ひとりでゆっくりと楽しむんだね。みんなには内容を見せたくないんだろうな」と言い合っていた。

翔太兄も特に反対せず、にこやかに私を見つめていた。彼の目には星が瞬いていて、熱い炎が揺れているようだった。その笑顔があまりにも美しくて、私は思わず見惚れてしまった。

みんなが楽しそうにしている中、空気を壊す人が一人いた。

玲奈は長いため息をつき、舌打ちしながら頭を振り、「私はある人に忠告するけど、今すぐ読んだほうがいいよ。後で読むときっと気を悪くするだろうから」と言った。

「どういう意味だ?まさか……」大和が玲奈のそばに寄り添い、彼女から無言のまなざしを返された。

玲奈はあきれたように肩をすくめ、ちらっと私を見てからすぐに視線をそらした。

私は翔太兄の隣に立ちながら、あの夜彼女が言った言葉を思い出し、こんなタイミングでラブレターを渡すのは良くなかったのではと急に後悔した。

しかし、もう後悔しても遅すぎた。翔太兄は私の不安を察したのか、あるいは何かを思い出したのか、私の手を放してラブレターを取り出し、一行一行読み始めた。

翔太兄の表情が突然変わり、最後のページの署名を見ると、顔はまるで墨で書かれた字を洗っていない硯のように真っ黒になった。

翔太兄から冷たい気配が漂い始め、彼は冷ややかに私を見つめた。私は恐れて二歩後ずさりし、彼の冷たい気を避けるようにした。

「翔太兄、ラブレターには何が書いてあるの?読み上げてよ、みんなで甘い気分に浸ろうよ」進がまたしても命知らずに前に出て、みんなは同情するように彼を見つめました。

私も彼の低い感受性に頭を抱えざるを得なかった。

翔太兄の顔色はどう見ても甘いものではなかった。

どうしてだろう、もしかして松沢先輩が翔太兄に送ったのはラブレターではなかったのか、それとも翔太兄はラブレターの文体が気に入らなかったのか。

そんなはずはない、聞くところによると松沢先輩はデザイン学科の優等生だそうで、ラブレター一通もまともに書けないわけがない。

翔太兄は突然冷たい声で言った。「食事中に黙ってられないのか?」

全員が黙り込み、悪事を働いた子猫のようにそろそろと自分の席に戻った。立っているのは私と翔太兄だけだった。

翔太兄はラブレターを元通りに折りたたんでポケッ
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