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第87話

私は少しパニックになり、携帯を取り出して何度も電話をかけた。翔太兄の周りにいる、私が番号を知っている人たち全員にかけたけど、どれも応答がなかった。

諦めずに進にかけて、瑛介にもかけた。何度もかけたのに、誰一人出なかった。

みんなで一斉に姿を消したの?

翔太兄に何かあったのかな?

不安になって走り出して、バラのアーチを抜けて、息を切らしながら大学院の画室まで駆け込んだ。

でも、画室のドアはしっかり閉まっていて、いくらノックしても誰も応じてくれなかった。

もうダメだ、翔太兄を見つけられなかった。

まるで天が落ちてきたような気分だった。

気落ちして寮に戻ると、ご飯を食べる気にもなれず、そのままベッドに倒れ込んで眠った。

午後は授業がなかったので、現実から目を背けるように夕方の五時近くまで寝続けた。お腹がぐうぐう鳴っていた。

翔太兄は、私をもっと太らせたいから、一食でも抜くのは許されないと言っていた。

私はわざとやっていたんだ。わざとお腹を空かせていたんだ。翔太兄は私に食事をさせたいと思っているから、もう二食も食べていなければ、きっとまたご飯を食べさせてくれると思って。

だからお腹を空かせて、ただ翔太兄が来てくれるのを待っていた。あるいは、彼がどこにいるのか教えてくれたら、私が探しに行くこともできる。どんなに遠くても。

夜になっても翔太兄からの返事はなく、LINEには数十通、電話は何十回もかけたけど、翔太兄は何の音沙汰もなかった。

また何の理由もなく見捨てられたのかな?

消灯後、私は布団の中で、ひとりで涙をこぼしながら泣いた。

翔太兄がどうして私を無視するのか、本当に分からなかった。私はいったい何を間違えたのか、どうしてそんなに怒らせてしまったのか。

翔太兄も私を見捨てたんだ。これからはまたひとり、なんて孤独なんだろう。

高校三年の十五夜以降、拓海の後をずっとついていた私は、ひとりでいることが多くなった。あの時期、毎日心が空っぽで、世界中に見捨てられた気がした。

そんな、骨まで痛むような悲しい夜、何度泣きながら眠りについたか分からなかった。

今の私は、あの時に戻ったような気がして、ひとりですべてを黙って受け止める。

大丈夫だ。もう慣れている。初めて見捨てられたわけじゃないんだから、大丈夫だ。今回は泣いたらもう泣かないでおこう。

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