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第88話

「そうだね、美咲が無理して強がっている姿を見ると、心が少し痛むよ」

「助けてあげようか。あんなふうにしていると、こっちまで辛くなる」

「でも、彼女自身が分かるまで待たないとね。それに……」

私は足元の何かを踏んでしまい、ガチャッと音がして兼家玲奈と森川律子を驚かせた。二人は洗顔フォームの泡だらけの顔で固まっていた。

「携帯を取りに戻っただけだから、すぐ行くよ。玲奈、律子、私は大丈夫だから、心配しないで」私は静かに微笑んで言った。

翔太兄が私にもう構ってくれなくなったこと、本当はそんなに悲しくはなかった。ただ心の中のどこかがぽっかりと空いた感じがした。

でも大丈夫だ、本当に大丈夫だ。

これはただ過去の繰り返しに過ぎない。私は一度目を乗り越えたんだから、二度目も乗り越えられる。

ましてや、これは何の約束もしていない翔太兄のことだ。

きっと彼は実家に電話して、明日香こそが家族だと知ったんだろう。外部の人間として、こんなに長く私の面倒を見てくれたのは、すでに十分だ。これ以上は期待すべきじゃない。

翔太兄を責める気はない。本当に、これは私の運命だ。

桜華大学には四つの学生食堂があり、それぞれが五階建ての建物で、南北の主要な料理を取り揃えていて、食べ物に困ることはなかった。

でも、桜華大学の学生は多いので、毎日ピーク時には各食堂のカウンター前に長い行列ができる。お気に入りの料理は、早く来ないと手に入らないことが多かった。

私が食堂に着いたときには、すでにたくさんの人で賑わっていた。

肉まんのカウンター前には二、三十人の列ができていて、日式焼き餃子の窓口にはそれ以上の人が並んでいた。

私は大人しく肉まんの列に並び、前の学生に合わせて一歩一歩進んでいった。

大体十五分待って、ようやく私の番になった。トレイを手に取り、近くの空いている席に座り、一口肉まん、一口味噌汁を真剣に食べ始めた。

「あなた、美咲ちゃん?」

私は食べることに夢中で、向かいの学生がためらいがちに話しかけてきた。

顔を上げると、なんと初江先輩だった。

胸がドキッとして、人生って本当にどこで誰に会うか分からないものだと思った。

会いたい人には会えず、避けたい人には避けられない。そんなところがこの食堂の嫌なところだ。

「どう、美咲ちゃん、私の手紙を翔太に渡してくれたの?彼はなん
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